2011年10月5日水曜日

JG22日目[番外編]「永田賢介の今後キャリアパス」

こんにちわ、ジン@永田賢介です。ここ2〜3日更新が滞ってしまってすみません。
ちょっと予定より早く、色々と仕事が動き出しまして。言い訳というつもりではないのですが、今日はここで番外編ということで、最近の自分の状況と僕の今後を(勝手に)シェアさせて頂ければと思います。



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8月末に東京から福岡に戻って来ています。この勉強チャレンジに集中するため、福岡に帰った事をあまりオープンにはしていなかったのですが、何かとお誘いがあるとついつい外に出てしまっておりまして。
もちろん、遊びの予定 ということではなく、ミーティングやセミナーでちょっと喋って欲しいという依頼とかですね。

で、そういうちゅうぶらりんな状態ということもあるのか(まあ以前からか?)「ジンさんって何している人?」とよく聞かれます。
9月までは「無職」「お勉強しています」ということにしていたのですが、仕事が一件入った事もあり、10月からは「NPOのコンサル 兼 雇われプロジェクトマネージャーで、フリーランス独立しました」ということにしました。NPO的に言うなら「1人中間支援」でも良いかもしれません。

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元々前職の時から、プライベートで任意NPO団体を作って、夜と週末には自主イベントの他にNPOのコーディネートとかしてはいましたが、やっぱり対象であるNPO自身にお金がないです。
その時は昼の職場からお給料もらってたし、勉強にもなるしそれで良いとしていましたが、いずれはそちらを本業にシフトさせていくつもりだった。

だから僕は、1年間の修行でファンドレイジングを学んで、自分でお金を引っ張って来て「これで一緒にプロジェクトやりましょう、それで僕の人件費や外注費も払ってください」と言えるようになりたかったんです。

東京では、学生でもないのにインターンとしていくつかNPOの活動を回って、尊敬する人に鞄持ちとして師事して、その周りのコミュニティとも関わらせてもらって、短い期間だったですけどファンドレイザーとしても小さな結果を出し、実際に得たことは多かったと思います。

でも、それでも、きっとまだまだこれからで。
東京で教えてもらったものは「スキル」ではなく「在り方」、得たものは「肩書き」よりも「覚悟」だから。

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僕はまだ自分に【値付け】が出来ません。特別な資格を持っている訳じゃないし、前職がブランドになる訳でもない。
自分で仕事を創って、お金を回して、実績を積んでいかないと、自分にどれくらいの市場価値があるのかわかりません、相手に喜んでもらえる価値を生み、正当な対価として受け取れるのかを、見えるようにしていきたい。
というかもしかしたら、その市場そのものをつくっていかないといけないのかもしれませんが。

自分さえ食えればいいなら、多分東京に残っていた方が仕事もあったはず。
でもまずは自分が、そしていずれは、周りの若い仲間達も福岡のNPOセクターで安定した就職をし、人並みの給料をもらって働いていけるようにしたいんです。

実際、10月から約半年間かけて、ハンズオン型のコンサル仕事を一本頂きましたが、逆に言えば今のところ僕の収入源はそれだけ。毎月の携帯代とWiFi代、保険を払ったら、ふーっと飛んでいってしまう額です。
実家に甘えさせてもらっている今の状況から、少しでも早く脱さなければならない。けれど、収入のために下手にアルバイトや興味の無い仕事に手を出してしまうと、いつまで経ってもその場しのぎになってしまう。

どこで、ぎりぎりのラインを引いていくか。

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きっとこれから暫くは、かなりしんどいと思います。まだまだ新しく知るべき事、引き続き学ばなければならない事も沢山ある。でも大変有り難い事に、福岡にも多く学ぶことができるメンターも見つかりました。(というか、実は東京に行く前に勝手に自分の心の中では決めていたのですが)

「自分ならできそう」と思ったからチャレンジするんじゃなくて、「自分がやらなきゃいけない、やるべき」と思ったから、出来るようになる地点まで行くしかないだけ。

「1年間福岡を離れてて久しぶりだけど、全然変わらないね」って言われる位がいいんです。僕は変わる為に変わるんじゃなくて、変わらない為に変わり続けていきたい。ゆっくり、急ぎながら。

まずは週末の「コレクティブハウジング全国大会」までで、きっちり東京での役目を一旦締める。それでちょうど福岡を離れてから1年。

いつの間にか 

うっかりと 

でも確かに 

僕は人生の節目を超えていきます。


皆様、今後ともどうぞ宜しくお願い致します。


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 *ちなみにこのご寄付はもちろん、僕の収入になったりはしませんので。笑

2011年10月2日日曜日

JG21日目「会議が絶対うまくいく法」

本日ピックアップしました本はこちら。
全ての組織において重要であり、また特に平等な力関係と民主的な意思決定を主とする非営利組織においては、特にマネジメントの難しさが表れるところであり、また本質ではないかと思います。

1976年に書かれ、2003年に日本語訳された古い本ですが、今読んでも非常に普遍的で重要な基礎が押さえられていますし、また、当時においてはかなり先進的/革命的だったのではないかと思われます。

(ちなみに著者の1人マイケル・ドイル氏はインテル、AMD、GE、IBM等様々な一流企業にファシリテーションの技術を導入してきた、著名な戦略コンサルタント&ストラテジストだそうです。)



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1)なぜ会議は重要か

ほとんどの組織において「会議」は毎週毎月結構なペースで実施される。通常、人件費では7~15%がその負担にあてられるそうだ。
しかし、一方において「会議は踊る、されど進まず」と評されるように、一辺倒の儀式のように形式張っていて、その効果が実感されないという声も良く聞かれるのではないか。

会議は、1人では解決できない問題を複数の知恵を持ち寄ることで解決していく、また意思決定のプロセスに組織のメンバーを参加させ主体性を生むための手法だ。その成否の評価は「結果」と「プロセス」という2つの基準によって計られる。

まず、この本の最初に、会議を成功させるには、出席者全員が一つの問題、一つの進め方に同意していることが絶対条件としている。
●何を解決するか・・・コンテンツ(問題/話題/議題)
●どのように解決するか・・・プロセス(アプローチ/方法/進め方)
これらの前提を共有することにまずは力と時間を割くべきであり、ここが共有されない限り、議論は一方的なものかもしくはバラバラになってしまう。

会議における「コンセンサス(合意)」は、誰かを説得したり妥協させたりすることではなく、全員納得出来る状況を作り出すまで協力し合うという強い意志であるとこの本では定義されている。
多数決のような調停手法では必ず「Win-Lose」の関係になってしまい、それは共同作業ではない。意見の違いは自然なことであるという前提の上に立ち、ベストではなくても皆が納得できる解決策を出せることが「Win-Win」の状況と言えるだろう。


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2)役割分担

本書の中で取り扱う会議運営手法は「ケース・メソッド」と呼ばれるものであり、いまでこそ少なくなった「リーダー=議事進行役」という枠組みを廃し、参加者の役割分担を明確にしている。

「マネージャー」「ファシリテーター」「メンバー」「書記」
以下に、それぞれの役割を確認していこう。

A.マネージャー
責任、権限を持ち、最終的な判断を下すリーダー。会議のプロセスをコントロールしようとしてはいけないがメンバーの1人といて議論には参加する。
最終的に結論が出ない場合の判断、また決定事項の実施と普及も行う。

B.ファシリテーター
完全に中立な立場に立ち、議事のスムーズな進行に尽くす役割。全員が発言しやすい前向きで建設的な雰囲気を作り、またそれを阻害するような個人攻撃や批判のみの発言、1人だけが長時間喋り続ける状況を避ける。
また「コンテンツ」と「プロセス」を区別し、整理して、どのような議事進行を行うかを参加者の同意を得ながら決めていく。

C.メンバー
会議の中心であると同時に、ファシリテーターや書記の監視役でもある。100%中立になれる人間はいないので、彼らの考え方や感情が会議に影響を及ぼすようであればそれを注意する。

D.書記
ホワイトボードもしくは模造紙に「会議メモ」を作成する。内容は箇条書きで構わない。可能な限り半円形の座席配置にすることで、参加者の意識とエネルギーをメモ(議題)に向けることが望ましい。具体的効用は以下。
・参加者がメモを取らず会議に集中できる
・議事が適切な順を追って進行し・また遡らずに済む
・遅刻者も現状を把握しやすい
・会議のプロセスを可視化する
・図や表を描くことができる
・個人のアイデアをグループのものとして取り扱うことができる。
(人間関係に左右されず価値・有効性の評価をできる)


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3)タイプ別会議の進め方

一口に会議と言ってもその種類は様々である。それぞれの目的に応じた開き方、進め方をしなければならない。

ア.問題解決のための会議
現状を変えることが問題解決であるならば、まずはその現状を「問題」として認識するという点を共有しておかなければならない。また、メンバーの中に「どう取り組むか」を知っている人がいるということも重要な条件だ。

イ.意思決定のための会議
ピラミッド型の組織では最終的な決定権を持つ人間が限られている、また企業の取締役会のような水平的な組織であれば多数決にならざるをえない場面もある。
会議の前に必ず「どのように決定するか」「誰が決定するか」をメンバーに周知しておかなければ、強引に押し切られたと感じたり、また、形式だけであったと思われかねない。

ウ.計画を立てるための会議
短期的な実務的計画であれば、なるべく参加者が少ない方が早く決まりまた詳細を考慮することが出来る。逆に長期的な目標設定や戦略検討であれば、多くの人に参加してもらった方がその意識を高めることができるだろう。

エ.報告/発表のための会議
このタイプの会議が最も間違った方法で運営されやすい。単なる報告であれば他の手段で構わないし、もし報告を聞いた後に問題の所在を明らかにして解決に向かおうとするのであれば、質疑応答や問題解決型会議へのシフトは必須になるだろう。

オ.評価/フィードバックのための会議
結果を出すための会議とは大きく正確が異なる。通常以上に会議の運営を計画し、批判的にならないようにしなければならない。全員から発言を引き出し記録を残していくため、ファシリテーターと書記の役割が更に重要となる。


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4)問題解決

問題を解決していくには、一定のステップを踏んでいく必要がある。個人レベルでは無意識にでも進んでいくプロセスを全体で行っていくため、ファシリテーターは力を割かなければならない。

ステップ①問題の認知
「問題=悪」ではないということをメンバーに徹底して認知させた上で、複数の角度からの問題の認識をすりあわせていく。問題を顕在化させ、それが放置された場合と解決した場合のシナリオをプランニングする。

ステップ②問題の定義
問題の分野を限定する、同時に狭くなりすぎた場合に見逃す危険性にも注意する。解決策と問題定義を明確に切り離す。

ステップ③問題の分析
問題をいくつかの構成要素に分解して考える。5W1Hや、維持力と改善抑止力の関係性を明確にする。下位問題への分化をする際には一般論と具体的な事例のバランスに注意する。

ステップ④選択肢の作成
ブレインストーミングや形態分析、既存の解決策のリスト化、付箋によるキーワードの切り離しと移動等の手段を用いて、クリエイティブなアプローチを増やしていく。

ステップ⑤選択肢の評価
どの選択肢が「良い」と判断するかは、自然のままでは個人的価値基準に依ってしまう。必ず判断の前に共通の判断基準を作り、合意しておかなければならない。

ステップ⑥意思決定
前提として、単一の案を選ぶ必要は無い。但し、全員一致のコンセンサスを得るまでは、要望を追加していく「足し算」と呑めない条項を削除していく「引き算」を駆使し微調整とし続けていく。

ステップ⑦計画
意思決定の後には実行の方策を議論することが多い、その手法には「フローチャート」「ゴールからの逆算」「5W1Hの明確化」「長期目標と短期目標の設定」などを駆使し組み合わせながら形にしていく。

ステップ⑧実践とフィードバック
まずはテストとしてとにかう実践し、その結果をモニタリングする。失敗を恐れずに適宜修正を加えて解決へ近づけていく。

*主には準備段階である①〜③に会議の時間の多くを割くべきとの注意書きもある。


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今回はちょっと文章ばかり、それも中身をまとめただけのものになってしまいました。
ただ、それでも今後自分がチームをマネジメントしていく時、また、もっと大きなフレームで僕たちが「対話し、合意形成し、自分たちで社会を創っていく」ことに対しても、基礎力を高めていくことができた気はしています。
こちらも師匠の1人から貰い受けましたが、ビジネス名著としてオススメ。

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2011年10月1日土曜日

JG20日目「コミュニティデザイン」

今回のチャレンジ寄付先になっている「コレクティブハウジング」という取り組みは、単に人々が集まって暮らす家を造るということではなく、開かれたコミュニティをつくっていくプロセスにその本質があるような気がしています。

そういう意味で、今回の課題図書のサブタイトル「人がつながるしくみをつくる」は、とても親和性が高いかなとか。

つい先日福岡にいらっしゃったにも関わらず、残念ながら講演を聴きそびれてしまった山崎亮さん。改めて本から触れていきます。




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1.風景を創るということ

著者である山崎氏がいわゆる通常のランドスケープデザインから、コミュニティデザインへと少しずつ舵を切ったのは、つまり「ハード」から「ソフト」への移行であった。
「つくる」ことをいったん辞め、デザインの行き先を多くの人の手に委ねる。また委ねると言っても投げっぱなしにせず、「つくるしくみをつくる」ことが彼の仕事だという。

形としての公園が完成したら終わりではなく、市民参加型の「パークマネジメント」という概念を導入したプロジェクトでは、NPO等の市民活動団体をディズニーランドのキャストになぞらえて運営に参加させた。
それはいわゆる「ボランティア」のイメージではなく、楽しんでいる人がいる場所に、更に人が集まってくるというごく自然な営み。

ここで重要なのはきっと「余白があること」だ。
最初から100%完成したものが目の前にあれば、人は消費者となってしまう。山崎氏がデザインした(あるいは、しなかった)場の「ホワイトスペース」にこそ、人が当事者として場に関わっていくこと、そしてコミュティが作られていく理由があるのだと思う。


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2.人を巻き込むしかけ

その後「まちづくり」の請け負い人(ファシリテーター)として全国各地でプロジェクトを進める山崎氏の仕事は、必ず共通して同じ地点からスタートしている。それは、「ヒアリング」。
まち を つくる と言っても、外から人が入って来て、建物を作ったりイベントを打って、一時的に観光客を増やしたり、外からの流れるお金を増やすような文脈の「町興し」とは全く逆のアプローチだ。

その土地に住む、これからもその町に生き未来に責任を負う人々の声を聴く事から始める。対話はこちらが話し始める事からはスタートしない。
昔ながらのムラコミュニティには、古くから続く対立構造や権力関係、また、触れてはいけないタブーも少なくはない。そこから切り込んでいく手段として、彼の用いる手法に二つ興味深いポイントがある。

1つ目…しがらみにとらわれず、かつ素直で純粋な心を持って大人達に接することが出来る部外者「学生」の力を借りる
2つ目…その土地の対立構造の前線ではなく、後ろにいる人々に焦点をあて、そこから仲良くなっていく。ex)地域の「お母さん達」「子ども達」

特に2つ目については、立場や責任を重んじる日本社会において、良い意味で有益な「根回し」であると考えられるし、また、彼が作ったコミュニティでは、その後の維持管理の為にファシリテーター役のスタッフや組織を間に挟んでいることからも、人間関係のアングルづくり・潤滑油に、非常に丁寧な思いを払っていることがわかる。


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3.みんなができること

島根県海士町は、通常、外部のシンクタンクに任せっきりになりがちで実を得ることが少ない「総合振興計画」を住民参画で制作した。
そこに関わった山崎氏が伝えたメッセージは
「1人でできること、10人でできること、100人でできること、1000人でできること。」というもの。

グループワークショップで発案されたプロジェクトをの後に「1人出来ることは明日からでも始める、10人で出来ることはそのままグループのチームで取りかかる、100人、1000人必要なものは行政と恊働していこう」となった。
それは、逆に言えば何でも行政任せにしないということ、私/共/公のラインを探っていくことで、「新しい公共」の担い手としての自覚を目指したとも言える。

更に、最終的にまとめられた海士町総合振興計画の別冊「海士町をつくる24の提案」では、海士町の祭りの象徴であるしゃもじのキャラクターに、それぞれのプロジェクトの発案者を似せた顔を掲載することで、「実行しなきゃまずいなあ」「参加しなかった友人にも見せたい」との声があがり、両面で動線設計が見事にデザインされたものとなった。


デザインとは、何だろうか。
少しでもかじったことがある人なら、一般的には「そのものを綺麗に見せるためのお化粧」であると誤解されていることが多いように感じるのではないか。

311東日本大震災で、山崎氏のstudio-Lと博報堂がコラボレーションして、学生コンペ等を通して生まれた「できますゼッケン」などは、課題解決そのものに至るツールではなく、人々がかかわり合う事での課題解決力を高める為の触媒になる、プロセスデザインであったと言えるだろう。

デザインの可能性(本書より転載)
1)継続を促すデザイン
2)決断を支えるデザイン
3)道を標すデザイン
4)溝を埋めるデザイン
5)関係を紡ぐデザイン


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最後に、山崎氏の関わるプロジェクトは長期に渡るものが多い、長いものであれば10年弱の道のりのまだ半分にも至っていないというものすらある。
一時的ではなく、長く続いていく価値を作る為には、ゆっくり進むことが大事。人が変化のスピードについてこれるように と言う。
しかし、その目指す先に対してだけではなく、きっとその道のりがゆるやかに、しかし一歩一歩未来に近づいていくようなものであればこそ、多くの人が合流することができるのだろう。

結果としてのアウトプット、プロダクト、成果ばかりを見続けることが当たり前になってしまった僕たちの社会が、もう一度その歩む道(プロセス)の豊かさに気付けた時、僕たちは「生きる」ことそのものを目的として生きることが出来るのかもしれないと思った。

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学芸出版社 山崎亮さんインタビュー http://p.tl/Fn2L


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2011年9月30日金曜日

JG19日目「この世で一番大事な『カネ』の話」

ずっと読みたかったこの本、師匠の一人に頂きました。
ていうか「よりみちパンセ!」シリーズの理論社潰れてたんですね。。新装版のこの本を手に取って初めて知りました、帯に書かれているマンガでネタにされているのが、さすがサイバラさんといった感じ。

(僕は結構昔、アジアでしちゃかちゃやってた時の"サイバラリエコ"の印象が強くて、なかなか最近の暖かい系の映画や本に手を出せずにいるのですが)

エッセイとしての本だと、内容が比較的自分に引き寄せた形になってしまうのはご容赦を。



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第1章 
どん底で息をし、どん底で眠っていた。「カネ」がないって、つまりはそういうことだった。

まず印象的なのは、西原氏の2つの故郷の対比だ。
幼い頃を過ごした港町はのどかで「人って気候がよくて食べる物に困らなければ、お金なんかそんなになくたってカリカリしないで暮らしていけるものなのよ」と語る一方、その後母親の再婚で引っ越した工業団地の街は「何か理由があって怒っているというよりは、いっぱいいっぱいの生活のしんどさがお母さんたちを常にイライラさせていた」と表現している。

彼女の地元は窓が割れ、すっぱい臭いが立ちこめる、歩けば床がベタベタする、きちんと風呂にも入れない浮浪者のような子ども達が走り回りる、そんな「戦場のような世界」
戦後の焼け野原ではない、さながら発展途上国。
暴力、窃盗、シンナー、乱交、「貧困」と「さびしさ」から抜け出す事の出来ない連鎖。そして父親の自殺。

「やれば出来る」なんて、カッコ良くて無責任な言葉を軽々しく投げつける大人たちに、マイナスの世界の住人は何を問うのだろう。


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第2章
自分で「カネ」を稼ぐということは、自由を手に入れるということだった。


西原氏は高校3年の時に友人と飲酒をし、退学しろと詰め寄られた際に裁判を起こしている。正直、「飲酒程度で退学?」と思う人も少なくないだろう。
なぜ、そこまで特に素行が悪かった訳でもない彼女に対し、高校側がそこまでの判断をしたかは分からないが、彼女は徹底的に戦った、裏切る教師達に「生活がかかった大人の現実と汚さ」を見ながら。

父親の自殺後、家中の資産をかき集めて出来た140万円のうち100万を母親から渡され、背水の陣で上京した西原氏は、予備校での絵の成績は最低、つまり「ヘタ」だったという。

自分の実力と理想との差を、客観的に計る力を身につけた彼女の答えは以下のようなものだった。
「そもそも、私の目標は『トップになること』じゃないし、そんなものハナからなれるわけがない。じゃあ、これだけは譲れない、いちばん大切な目標は何か。『この東京で、絵を描いて食べていくこと。」
「自分の得意なものと、自分の限界点を知ること。『それなら、ここで勝負だ』って、やりたいこと、やれることの着地点を探すこと」
「最下位の人間には、最下位の戦い方がある!」

そして彼女は予備校時代から営業に周り、イラストカットの仕事を取るようになる。現場で必要だったのは、単に絵のうまさではなく、トークだけでもなく、相手が面白がる、必要とする事を敏感に感じ取り、喜んでもらうこと。
それが「『才能』って人から教えられるもの」という言葉に集約されている気がする。


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第3章
ギャンブル、為替、そして借金。「カネ」を失う事で見えてくるもの。

『まあじゃんほうろうき』というマンガがある。最近の映画化ヒットものを除けば、西原氏の著書の中でも結構有名な方だと思う。
当初は仕事として始まった麻雀も、10年でマイナス5000万円。ギャンブル中毒で死んだ父親がありながら、同じ道を歩んだ彼女を「愚か」と片付けてしまうのは簡単だろうか。

最終的に、そこまで堕ちていかなかった理由はここで「良き師匠」がいたからだとする。それは「ギャンブルは負けて当然。大人としての授業料を払い負け方を学ぶところ、マナーとラインを知るところ」というような価値観。
別の企画でFX投資に手を出し、一晩で何百万、何千万という金額が消える経験から、彼女はかつて漁師の街で知っていた魚の臭い、生活の匂いが染み付いた「お金」と、データ上の数値が変化するだけの「カネ」の違いを実感する。

手で触れることの出来る価値の幅が、人の金銭感覚を左右する。損したくない・得したい それだけが中心になってしまう経済は、人間関係のセンスをも蝕んでいく。
「子どもにマネー教育を」という声には、僕は簡単には賛同しかねるが、良くも悪くも僕たちの社会を流れる血液のような存在「お金」に、無頓着ではいられない。


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第4章
自分探しの迷路は、「カネ」という視点を持てば、ぶっちぎれる。

西原氏は、学生時代にアルバイトをしてお金を稼ぐということに大いに推奨している。お金の重み、叱られるという経験、社会のしょっぱさ。
同時に、働いていく中では沢山、自分の心に嘘をついたり、我慢しなきゃいけないことがある、そういう事が日本の自殺者年間3万人という数字に繋がるのなら、「逃げちゃってもいい」とも言う。

もちろん、一時的な避難場所はずっと担保されている訳じゃない。そんな社会の中で、何の仕事をして生きていくのか。以下の彼女の言葉は非常に参考になると思う。

「カネとストレス」「カネとやりがい」の真ん中に、自分にとっての「バランス」がいいところを探す。それでも、もし「仕事」や「働くこと」に対するイメージがぼんやりするようならば、「人に喜ばれる」という視点で考えるといいんじゃないかな。
自分が稼いだこの「カネ」は、誰かに喜んでもらえたことの報酬なんだ。そう実感することができたら、それはきっと一生の仕事にだって、できると思う。


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第5章
外に出て行くこと。「カネ」の向こう側へ行こうとすること。

この本の最後の章には、フィリピンと同じようなカンボジアのスモーキーマウンテンと、グラミン銀行の事例が紹介されている。

貧困の連鎖で最も恐ろしいのは、「思考停止になってしまうこと」そして「諦めてしまうこと」
それを断ち切る為に必要なのは、単なる自己責任論でも、施しでもない。でも、当事者の強い意識と、外の世界からの誰かの支えが必要なのは確かだ。

「人は生まれた環境を乗り越えることができるか?」
この本に一貫したテーマは、人が働いていくこと、誰かと関係して生きていくことの先にしか見えないのだと答えているように感じた。


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個人的雑感
Not for Profit だからこそ

正直、自分はしんどい程の貧乏を経験したことが無い。裕福だった訳じゃないし、家庭にはそうとうなストレスを頂いて、その後の人生がちょっと普通じゃないものになってしまったけれど、大学の学費も全て払ってもらった。
就職してからも、平均して20万強の手取り収入+年3回ボーナスという今時破格の待遇。一人暮らしの家と車があって、それなりに財布の中身を気にせず外食も出来たし、たまに家具やPCも買えた。

1年前にそんな安定した仕事を辞め、28歳という「いい年」にして無職となった。
東京に行き、普通は学生時代にしか存在しない「インターン」という肩書きでいくつかのNPOを周り、それなりに得るものは多くあったと思う。

だけど、その経験は「資格」や「肩書き」に直接繋がるものではない、会社員時代の経験では、はっきり言ってビジネススキルなんてないに等しい。つまり、今の僕はこの資本主義社会で生きていくにはかなり不利な状況に追い込まれている。
将来のことを考えて、自ら追い込んだといってもいいかもしれない。

自分はかなりの現実/安定志向だ。
将来はビッグになりたい訳じゃなくて、家族で穏やかに暮らしていきたい。だけど、その為には会社に依存せず、自分の手で、力で飯を食っていく力が必要になる。
自分をきちんと経営し、誰かに感謝され、必要とされる仕事をしていかなければならない。同時に、次の時代を切り開いていきたいなら、今はお金にならない仕事も創っていかなければならない。

実家で最低衣食住は保証されているから、今のところ携帯代と社会保険さえ払えれば何とかなってしまう部分もあって、とにかく、ぬるいなと自分で思う。
新しい金融や、寄付市場の更にその先。ソーシャルキャピタルだけで生きていける「お金なんて無くなくたって」を証明しようと思うなら、今の僕はもっと「カネカネ」言わなければならない。

勝つための戦いではなく、負けないために。

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2011年9月29日木曜日

JG18日目「アメリカン・エキスプレス・リーダーシップ・アカデミー」

9/23~25に僕が参加した、ETIC.の研修の正式名称は「アメリカン・エキスプレス・リーダシップ・アカデミー」
そう、カード会社として有名なアメックスと、ETIC. の共催、そして全体監修はMOVIDA JAPAN 株式会社代表取締役の孫泰蔵さんという、贅沢なラインナップ。
(お誘い頂きましたETIC.の野田カオリさん、またその機会をくださったマドレボニータの吉岡マコさん、ありがとうございます)

僕自身は(まだあまり正式には公開出来ないのですが)近いうちにとあるNPOの経営に参画するということで、スタートアップ社会起業家や学生団体リーダーに混じって参加させてもらいました。





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■改めて

3日間がっつりの泊まり込み研修を終えて、改めて配布された資料を見返すと、一番始めの【ごあいさつ】という箇所には、プログラムの主な目的として以下のようなことが書いてあります。

1.ビジョン、振り返り
自らのビジョンを社会の中で再定義し現状の自分/組織とのギャップを再確認する。
2.モデリング
様々な実践者、理論をもとに、自らが目指すリーダーシップスタイルをイメージし、目指すべき方向性を定める。
3.ロードマップ
目指すべきリーダー像に対する現状のギャップをあぶり出し、リーダーシップを発揮している状態をKPI化し行動計画を定義する。

事前の課題としても「ビジョンシートの提出」を頂いていたのですが、今回の研修終了後に求められていたものは
【  自分の、自分の団体の「ビジョン」を明確にし・人に伝え共感を得られる形にし・その実現のための手段を確認する 】
事だったと思います。もちろん、完成版としてではなく今後常にアップデートしていくための基盤/姿勢づくりとして。



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■気付き

最終日には参加者全員でそれぞれのプレゼンを行う という前提のもと、インプットの講義とアウトプットのワーク等は続いていったのですが、その中での気づき。
(以下のスライドは自分のプレゼンから一部抜粋)



◎他の参加者からのフィードバックで気付いた事は、自分の団体は中間支援(基盤整備)のため、ビジョンや目標達成値を自団体+NPOセクター全体で切り分けて、それぞれにアウトプット/アウトカムの区別を明確にしておかないと、相手の実感まで落とし込めないということ。
(それをやると結果どうなるの?という状態)

◎次に、メンターになって頂いたSVP東京代表・岡本拓也さんからの問いかけ、ご指摘での気づきは、自分が重要だと思っていること=相手が重要だと思うこと ではない という、ある意味当たり前なこと。
最終日のプレゼンは4分/5スライド以内という非常にタイトなもの。その前提条件の中で自分が最初に削った要素が、実は最もイノベーティブで社会に発信すべき価値であったということにショックを受けました。
その後、一旦プレゼンを解体し、完全徹夜で作り直したのですが。。。

◎最終的に、プレゼン本番で、かものはしプロジェクトの村田さやかさん始め、他の皆さんの優れた発表とスライドの創り方から気付かされたのは「個人ストーリー」の必要性。
自分が立ち上げのNPOではないとは言え、やっぱりそこへの意識ってきっともっと擦り合わせて語れたはずで。「なぜ、あなたがそれをやらなければならないか?」という問いに答えられていなかったように思います。



◎総じて、最も悔しかったのは、それぞれの気づきが決して「今回初めてのものではなかった」ということ。
客観的な視点の必要性はもちろんのこと、マイストーリーが必要だということは、慶應SFC井上研究室の「マイプロ」を見させてもらって、自分でも実践した経験があるにも関わらず、団体のプレゼンを作成するとなると結構、頭が説明的に切り替わってしまうことに後から気付きました。
まだまだ、それぞれの学びが一つのアウトプットを形作る為に繋がっていないなと反省。

◎KPI(Key Performance Indicators=重要業績評価指数)に関しては、孫さんからも「そこがもう一歩足りない」とご指摘を頂きましたが、これまであまり実践的に触れてこれなかった領域なので、岡本さんの「KPIは目標そのものとは少し違って、その目標を達成するためのキーとなる行動にブレイクダウンし設定すると良い」という言葉を意識して、今後活用出来ればと思います。


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■リーダー?

僕は大学の時、社会学的な「組織運営」をテーマに、リーダーシップ含め色々と勉強していたことがあるのですが、特に今、自分がリーダーとか、社会起業家になりたいとは思っていません。
ただ、今よりも良い社会に向かって進もうとするなら、まず自らが変わり実践していくこと、そしてその変化のプロセスに少しでも多くの人が参画できるような、「デザイン」を考える必要・責任はあるかなと思っています。

研修の2日目にこれまた著名なHRインスティテュート・代表取締役の野口吉昭さんが語ったように、リーダーシップは時代によって変化し、最近ではファシリテーター型のリーダーシップが求められているように感じます。
もはや Lead=導く という単語自体が、整合性を持たなくなってしまっているのかもしれません。

今回ETIC.と共催であるアメリカン・エキスプレスさんの講義でも「社員全てがリーダーシップを発揮出来るように」であるという理念のもと、優れたリーダーの研究から抽出された行動特性を分析/類型化し、社内のある種バイブルとして共通用語を作っていっているとのこと。
ここではそこで紹介されたごく一部分しか転載しませんが、非常に具体的な定義や高パフォーマンスの事例についてもかなり具体的に示されているので、改めて見直すつもりです。

*行動特性(コンピテンシー)
リーダーシップにより成果を生み出す行動を4つのカテゴリーに分類。そして4つのカテゴリーを更に具体化し①~⑧に細分化、定義。
・ Create Our Future(未来を創造する)
①戦略性…広い視野をもって戦略を計画や目標に明確に結びつける。 
②創造力…現状を打破して、革新を推進する準備ができている。
・ Inspire Our People(社員を鼓舞する)
③関係構築力…目標を達成するために、チーム内およびチーム間で労力/リソースを調整する。 
④コミュニケーション能力…率直に、その場で建設的な意見を言う。人の話を良く聞き、協力的である。 
⑤人材育成能力…権限委譲と能力開発を通じて、目標を達成するよう動機付けられ奨励される、コミットメントの高い職場環境を作る。
・ Excite Our Customers(顧客を感動させる)
⑥顧客尊重…前もって顧客のニーズを予測して、具体的な要求を見極める。卓越した価値を確実に提供する。
・ Deliver on the Promise(約束を果たす)
⑦実行力…計画を前もって立てて、プロジェクトを推進するために行動を起こす。状況の変化に対応するために行動を修正する。 
⑧誠実さ、成熟度…自分自身の長所と短所を理解していて、自己啓発に取り組む。頼りになり、親近感があり、率直で、正直である。


最後に、ドラッカーの言葉を引用。
「リーダーシップは資質ではなく仕事である」
これ、すごくステキな考え方ですよね。 

あの場にいたメンバーが決して「選ばれた人間」ではなく、「気付いた一個人」だと思って、「みんながヒーロー」な未来へ、僕は進んでいきたいと思います。

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もっと深く学びたい、という方はネット上に関連リンク見つけましたのでぜひ。
http://diamond.jp/articles/-/1906
http://allabout.co.jp/gm/gc/377805/
http://www.nrf.com/Attachments.asp?id=20443 (PPT)

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2011年9月27日火曜日

JG17日目「困難を乗り越えるリーダーシップ」

ETIC.リーダーシップ研修、学びシェアシリーズ第二弾は、民間から「新しい公共円卓会議」の委員もなさっていた小城武彦氏。
個人的には、今回のプログラムの中で(ワークやシェアを除いたインプット側のセミナーでは)一番刺激を受けた内容でした。

東大法学部卒業後13年務めた旧通産省を飛び出し、初期のカルチュア・コンビニエンス・クラブ(TUTAYAの会社ですね)、そして産業再生機構へ。
カネボウの劇的な事業再建から丸善の代表取締役を経て、出版業界全体の危機を乗り越えるべく丸善CHIホールディングスで、今も困難の真正面で奮闘を続ける氏の生き様に、深い感銘と学びを得ました。

「丸善CHIホールディングス」


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◆2つの大きな問い
「なぜ、貴重な人生を今の仕事に使っている?」
「その仕事は自分の成長のためになっている?」

◆同質性の高い日本組織はムラ化しやすい
・ベンチャー企業はリソースが少ないため、人材の稼働率が常に120%。2~3年で急速に人が成長する。通常の組織では7~8割程度の力。
・なんとなく、白黒付けずなあなあになり「激しい議論は大人げない」とされる。これに対し本当に良い組織の会議は、前後でメンバーが変化する
・組織風土が甘い。マネージャーの考課がぬるく、フリーライダーを黙認している。その結果、個々人の自己評価は高いが業績不振という状態に。
・第三者的視点に立つ評論家が増殖、何か不都合があるとすぐに人のせいにする。
・顧客の都合<上司の都合になっており、マネージャー=偉いと勘違い。仕事を部下に丸投げし、管理職のスケジュールがスカスカに。
・人材は使命を忘却し、人間関係を優先するようになっている。
・なぜその仕事をしている?/自分は成長している?に答えられない社員。大企業ほど機能別で社会との接点が視野に入らず、会社のロイヤリティーが部門の周辺・同僚になってしまう(うちの会社=少人数)日常業務を通じた貢献感の欠如が根本的な原因。
・魔の3文字は「どうせ」減点主義の人事制度+新入社員の問題意識封殺
・欧米は「罪の文化」唯一絶対の存在をモラルとするなのに対して、日本は「恥の文化」他人の目が判断基準。逆に言えば、周りがやっていればOKになってしまう。
・日本文化において「今、ここ」に集約する世界観がある。「過去は水に流す」「明日は明日の風が吹く」

◆経営者として
1)人間観=正直で透明な組織運営、会社を離れて一人の人間としてOKか?
2)企業観=経営理念、社会に存在する理由。利益はあくまで手段
3)ステークホルダー観=従業員※>顧客>株主 ※但し全員ではない
4)トップの専管事項への注力=経営理念の浸透活動と、痛みを伴う施策
5)合理と情理の止揚=株主は合理とグローバル/組織は情理とローカル

◆個人として
1)ミッション=使命は命を使う事、日本人を元気にしたい
2)日本人アイデンティティ=知の巨人、本から学ぶ
3)成長=1年前の自分、10年前の自分と比べる(外部調達不可な右脳能力の開発を優先)
a.先輩から学ぶ
b.人間関係から逃げない
c.苦手なタイプと付き合う 
d.相手の知らない裸の自分をさらす
e.相手の靴を履く=相手の体温を感じる意識
4)リスクを取る=先人達のおかげで、失敗しても死ぬ事はない日本社会
5)自省を怠らない=はじめの大きな2つの大きな問いを常に自分にも

◆ユダヤ人の最後の問い
(死ぬ前に、自分の人生の行いや決断を振り返った時)
「お前はお前であったか。」


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もっと深く学びたい、という方はネット上の音声インタビュー見つけましたのでぜひ。
キャリアアップ・転職のFコミュ動画 → http://career-finders.net/videocast2/t-ogi/


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2011年9月26日月曜日

JG16日目「リーダーシップとイノベーション」

9月の23〜25日、ETIC.のリーダーシップ研修に参加していました。

本を読む時間は全くなかったので、期間中はお休みとJustGivingのページには事前に書いてはいましたが、学びの振り返り含め、印象に残ったプログラムでの学びをここにシェアしたいと思います。 

連続して何日分かをアップしていく予定ですが、初日23日からはこのセミナーの全面監修でもある、孫泰蔵氏(ソフトバンク孫正義氏の弟さんで、ご自身も大変著名な実業家でいらっしゃいます)からの社会起業家の役割とイノベーションについてです。
ここはインプットが多かったのでメモ的ではありますが。


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●アントレプレナーシップとは
技術革新や規制緩和が生み出すイノベーションにより、人々の潜在需要であるニーズを満たす新しいバリュー創造の可能性に“いち早く気付き、実現するという行為”

●心構えとして
「他人はごまかせる、だが自分を納得させることほど難しいことはない」
「楽観的であれ、ただし楽観的になるためにはとことん突き詰めるしか無い」
「Think Big.多く考えろ、小さくまとまるな」
「集中力と発散力の使い分け、目の前だけでなく離れて広く見る鷹の目を」

●リーダーの思考の組み立て方
必ず上位概念を組み立ててから下に降りていく。手法ありきでは必ず失敗するので、下から上には決して進んではならない。(下図を参照)



●ビジョンとは
自分達と社会が将来ありたいイメージ
具体性をともなった視覚的なもの
それを見た人にちからがみなぎるもの
共感できて応援したいもの
視覚に訴えるものが重要!できれば映像で
1分で伝わる深イイ話を参考に

●兄である孫正義氏のアイデア発想法
・問題解決型発想法
日頃困った事、面倒だと思うことをメモにしておく
・逆転発想法(水平思考)
単語長1個に名詞を書き出しておき、めくって出たものの特性を反転させてみる
・複合連結法
単語帳2組に名詞を書き出しておき、めくって出たものの特性を組み合わせてみる

●コンラッド・ヘロウド発想法
・Challenge Thinking
変えたい制約に焦点を定め、制約が無くなった場合の世界を考える
・Idael Thinking
現在地/理想/理想への到達方法を明確にする
・Strech Thinking
現在の状態に対して絶対無理な目標を設定し、その達成方法を考える

●目標と成果
無理と思っている限り新しい方法に取り組めない、焦点を定める必要がある
「目標が行動を促し成果が行動を持続させる」
KPI=Key Performance Indicator 指数設定の重要性
中期目標→短期目標→KPIのブレイクダウン
スケジュールの重要性
・目標を設定しなければ人は動かない
・計画は、現状からの予測(足し算)ではなく、目標値からの逆算(割り算)で作る!

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2011年9月22日木曜日

JG15日目「一流の思考法」

昨日は夜行バスの中真っ暗だったので、
電子書籍を読んでiPhoneのメモで書くということにしました

この本の著者・森本氏はシアトルマリナーズの専属トレーナーであり、2009年のWBCでは日本代表チームのトレーナーも務めています。

日本人では野球にあまり興味が無い人でさえ知らないことはない、超一流のスポーツ選手であるイチローを一番側で支え、身体づくりに貢献してきた経験から書かれたこの本。
何かの分野で一流であるということは、また一流になろうとすることはどういうことかを、具体的に読みときました。



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1.失敗とプロセス

元々陸上の選手であった森本氏が、初めて野球に触れた時の感想に「失敗に寛容なスポーツなんだな」というものがあったという。
陸上が、走るタイムや跳んだ距離など基本的に一発勝負の白か黒なのに対して、野球はいくら極めても毎回ホームランやヒットを打てる訳ではない。そもそも人間である以上無理な話だ。

通常、どんな名打者でも打率は三割そこそこである、逆にいえば10回中7回は失敗ということになる。
しかし、一流の選手はこの「打てなかった」ものを失敗とは捉えないという。

イチローはどんなにヒットを量産し大記録を打ち立てても、自分のフォームやプレーに納得がいかない時があるという。
逆に、ボテボテのゴロでアウトになった時に、自分の中で探し求めていたコツをつかんだとして、興奮していたこともあるそうだ。

一流は、その場の結果に一喜一憂しない。希望通りの結果が出ない時に感情的になるのではなく、冷静に分析し修正をかけ次につなげていく。
その時、それは失敗ではなく、より良くなっていくためのプロセスなのだ。
変化成長し続けるプロセス主義には自然と結果がついてくる。周囲の評価ばかり気にする結果主義は、逆にマイナスのスパイラルにはまりかねない。

 
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2.無意識の力

では、失敗を常に成長の糧にしていくには、また失敗を減らしていくにはどうしたら良いか。
森本氏はそこに「無意識」の重要性を説く。

私たちが日々当たり前のように行う、例えば歯磨き、例えば通勤の道のり、そこに失敗はあるだろうか。よっぽどのトラブルが無い限りあり得ないし、またその判断基準もないだろう。

ただ、もし歯医者に行ったその場で先生の前で磨いてくださいと言われたり、出張で全く違う場所に行けと指示がでたら、いつもと異なる状況に対して焦って疲れたり、失敗する可能性が出てくるかもしれない。

本番で力を発揮するのに必要なのは、日常の延長線上として無意識に自然に行動できる準備をしておくことだ。
イチローは自分の身体のメンテナンスのため、ストレッチには他の選手より2~3時間多くの時間をかけるという。下準備あれこその怪我の無い好成績だと言える。

自分に必要な準備を自分で見つけ、時間をかける。それは特にチームであればこそ、短所の補完ではなく長所を徹底的に伸ばすことの方が良いと森本氏は語る。


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3.4つの型づくり

無意識に行動できるようにするためには、自分なりの「型」を見つけることが重要だという。

●一日の型
イチローは常にベストな自分を維持するため、毎日の行動はほぼ同じ時間に同じことをし、ルーティーン化しているという。
食事の内容や、通る道すら固定しているというから驚きだ。

●仕事モードに入る型
準備から本番に移行する際、野球選手ならいわゆるアップやストレッチを行うことで徐々に身体や頭を戦闘モードに移行する。
ビジネスマンも、仕事を始める状態にするために朝のシャワーやランニング、コーヒーなどスイッチを決めておくことが生理学的にも精神的にも非常に効果的だという。
アメリカのジムやコーヒーショップが早朝から開いているのはこのためだという。

●プライベートになれる型
同時に、忙しい日々の中で興奮状態から意識を戻し、リラックスしてすぐに休息に入れることも重要だという。
本書の中では、腹式呼吸や半身浴などを例にあげている。

●つまづいた時に立ち直る型
どんなに日常をルーティーン化していても、想定外のトラブルや変更が避けられないことがある。しかし、型を持っていればそれに対して調整・修正をかけていく対応力を持つことが出来る。
イチローがメジャーリーグに行ってバッティングのタイミングを変更するのに3日しかかからなかったように、また、日常に当てはめるなら、料理のレシピがあれば少し甘く、濃いめに、などのオーダーに対応できることと同じだ。


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4.道に生きる

一流の仕事をして、成果を出すために最も必要なことは何か。森本氏が多くのプロ選手と関わり出した結論は「道」を見つけ「道」に生きることだった。

一度はトレーナーとしての道を絶たれ、営業マンとして働いてから復帰した経験からは、志を抱きながら、今できる最善を尽くす姿勢と強い意思を感じさせる。

道は他の誰かに決められるものではない。自分が設定し、自分で評価し、日々を歩いていくものだ。
一流に「失敗」という概念が無いのと同じように、ライバルや、メディアの評価に一喜一憂しない。過去の栄光に縛られず、しかし昨日の自分と今日を比較してより良くなろうとし、未来に向かい続ける先に道はある。

また同時に、道は自分だけのエゴを追っても定まらない。チームとしての役割を考え、自分が果たすべき使命を考える。1番バッターにはヒットが、4番バッターにはホームランが求められる様に。

最終的にこの本は、道を目指す、成果を出す、そのための準備をするのに最も必要なことはバランスの取れた身体づくりであるという、トレーナーらしい結論で締められている。
それはスポーツ選手だけではなく全てのビジネスマンにおいても、時間の管理、体調管理、姿勢や食事睡眠、これらがパフォーマンスの大きな部分を占めるのだという。

このためのより具体的なストレッチ、呼吸法などは本書に記載されてあるので、ご興味あればぜひ一読頂きたい。
 
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もっと深く学びたい、読んでみたいという方はぜひお買い求めください。
App store http://p.tl/uEEJ オンライン書店ビーケーワン http://p.tl/laEU

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2011年9月21日水曜日

JG14日目「『自分ごと』だと人は動く」

JustGiving14日目、自分が始めたチャレンジが、コレクティブハウジング全国大会スタッフにむしろダメージを与えているのではないかと不安な今日この頃・・・汗

↓他にもこんなチャレンジが!! (おススメは腹筋w)
http://justgiving.jp/charity_list?charity_q=NPOコレクティブハウジング社

さて、そんなこんなで今日僕の選んだ本はこちら。
「当事者意識」という言葉にも近い「自分ごと」
NPOが目指す(と僕は思う)全ての市民に居場所と役割がある社会に向けて、僕たちが探すコミュニケーションとは何かを考えました。

キー・ワード重視の本だと考えたので、久々のスライド形式です!!
こちらに公開していますので、ご覧下さい。
https://picasaweb.google.com/112974527783388689191/JG14

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2011年9月19日月曜日

JG13日目「社会起業家という仕事」

JustGiving13日目は昨日の宣言通り、連続で「社会起業家という仕事(チェンジメーカーⅡ)」を題材にしました。

第一作目と同じく、17のテーマ/20名以上のインタビューという切り口で創られたこの本は、やはりそれぞれ手に取る方によって心に響くポイントは異なると思いますので、ぜひ一度書店でパラパラとめくるだけでも、ぜひ。


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1.事業としてのソーシャル

【ベストガード・フランドセン】は、世界の貧民のための人道商品の研究/開発/販売を行っている。
マラリヤを防ぐ為に効果的な殺虫剤織り込み蚊帳である「パーマネット」が2003年に登場以来、その類似品を生産する企業が数社表れたことを、創業者の【
ミケル・ベストガード・フランドセン】は喜んでいる。それは単純に利潤を追求することではなく、人道製品という市場を創出し、競合製品がクオリティを高めていくことを良しとした彼の広い視点によるものだろう。

日本の社会起業家の代表とも言えるのは【駒崎弘樹】病児保育を中心としたサービスで、子育てと自己実現の両立を切り開く【NPOフローレンス】を立ち上げた。
フローレンスは共催保険型のサービスで会費を収益源としているが、当初その価格をあまりに最低限に設定していたため、半年経った時点で値上げに踏み切ったのだが、本書にあるその時の会員の反応が驚きである。
「財務諸表の人件費が少ないので心配していました」「会費を値上げして経営が成り立つようにしてください」「フローレンスが無くなったら困るのでどんな協力も惜しみません」
通常は消費者に対して安ければ安い方がサービスといったような風潮がある中で、本当の意味で必要とされ、利用者が仲間として支える事業を行うのが、社会起業家と呼ばれる仕事なのだろう。


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2.心の在り方

子どもたちの中に共感の力を育て、暴力やいじめをなくす【ルーツ・オブ・エンパシー】はそのプログラムの中心に「赤ちゃん」を触媒とするという非常にユニークな取り組みだ。
親を目の前で殺され心に深い傷を負い暴れたばかりいた少年が、赤ちゃんとのやり取りの中で心を触れ合わせ、笑顔を取り戻した。彼がその直後にインストラクターに向けて発したと書かれている「誰からも愛されたことがなくても良いパパになれるの?」という言葉は、押さえ込まれていた人間性が溢れ出した瞬間と言えるだろう。

一方、【インターナショナル・ブリッジス・トゥ・ジャスティス】代表の【カレン・チェ】は、犯罪を不当に裁く法律システムに対し、強い憤りと正義感を持って活動しているが、「政府を的に回して熱血で正義を訴えるような、自己陶酔型の人が何かを変革したためしがない」ときっぱりと語る。

社会起業家は、既存の数字だけで説明できるビジネスとは異なり、人間の根本的な感情や本当に大切にしたいものに訴えかけるが、そのプロセスはあくまで戦略的であり、自分の正しさを押し付けるようなことはしない。


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3.当事者に寄り添う

フリーターがホームレスに転がり落ちていかない、もしくはそこから這い上がる為の、日雇い仕事紹介機能を併設した短期滞在住居施設を運営するのは【エム・クルー】代表取締役の【前橋靖】だ。
彼自身がホームレスの経験者であり、彼ら自身の社会的弱者としての「自己憐憫」や「被害者意識」という思考の癖がまさに自分ごととして理解出来るという。
「フリーター問題はどこまで彼らに寄り添えるかがカギ」「彼らはやる気がない訳ではなくて、居場所とチャンスを与えて辛抱強く待てば必ず立ち直る」と語るその姿勢は、人への強い信頼と自信を感じさせる。

【パラン・パル・ミル】は、貧しい移民や親に放任され充分な愛情が受けられない子ども達に、里親とのマッチングを行う。1990年の設立からこの本が発刊された2007年時点で
2700組を超える縁組みを成功させているのは、代表である【カトリーヌ・オンジョレ】の幼い頃の経験と無関係ではないだろう。
貧しさと政府の政策により強制的に里親を点々とさせられたこと、その後叔父の深い信頼で大学を卒業し教師になった事などの経験が絡み合って今の彼女の問題意識と強い情熱を形成している。

巻末の解説では、社会起業家フォーラム代表の【田坂広志】が、「原体験」という単語をしばしば使用している。
他の誰でも無い、自分自信が出会った社会の矛盾や、強く共感したことは、「この問題を解決するのは自分の使命だ」という、必然性の意思の力を呼び起こす。
日々見過ごして来た小さな違和感を「こころのさざ波」とし、自分の内なる声に耳を傾ける。その時、我々一人一人が社会と向き合い、接続している、自分から何かを変えていける「ソーシャル・アントレプレナー」(社会起業化精神)を手にするのだろう。


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4.広がりへ

余談としてだが、この本を読んだ時に残る違和感の一つは「ほぼ全ての社会起業家がエリートである」という事実だ。
両親が学者や芸術家、著名な経済人であること、若いうちに海外留学をした事、有名大学で再先端の研究に心血を注いだ事。もちろん、幼い頃の苦境を乗り越え、這い上がった人もいるが、やはりその才覚や努力は、凡人のそれとは明らかに違う。

この本を読む年齢層の大半は、これからエリートになる世代ではない、「既にエリートである」か「既にエリートではない」かのどちらかだ。
もしこの事実だけをピックアップするなら、「所詮は一部の選ばれた人間か、不屈の精神を持つ努力家でなければ社会は変えられない」という結論に至り、「では社会起業家達に任せておこう」というマインドになってしまう、それでは、社会が本当に変化したとは言えない。

しかしきっとこの本が伝えたいことは、そうではないと思う。

確かにソーシャル・アントレプレナーの創成期は、これまでの社会の壁を突破すべく、ごく一部のエリートの類い稀なる力が必要だったに違いない。
けれど、そこで社会のシステムや人々の思い込みという分厚い壁に「事例」という小さな穴をあけた事、また、その手法をケーススタディとして次世代に残した事は、きっと次に続く変革の大きな助けになるだろう。

これまで一人のスーパーマンが成した事を、次は3人の努力家が力を合わせる事で実現できるかもしれない。その更に次の時代には、もっと多くの、ごくごく普通の日常を生きる人々の力を集め、社会を変える事が出来るようになっているだろう。
むしろ、その力を発揮するプロセスを開放することそのものが、本当の意味で「社会を変える」ということかもしれない。



誰しもが 変化の当事者 であるに違いない。 

「チェンジメーカー」というタイトルに込められた思いや、社会起業家達の志、我々がどう受け止め、次に繋いでいくのだろうか。

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JG12日目「チェンジメーカー」

JustGiving12日目/13日目は連続で「チェンジメーカー」「社会起業家という仕事(チェンジメーカーⅡ)」を題材にすることにしました。

「新しい公共」円卓会議の委員でもあり、「アショカ・ジャパン」( http://www.ashokajapan.org/ )の創立にも深くコミットメントされている渡邊奈々さんが著者であり、この分野に興味を持った事がある方なら、誰もが一度は聞いた事があるタイトルではないでしょうか。

この本は、それぞれ世界の各地域で活躍する社会起業家へのインタビュー集という体裁になっていますので、その中から興味を持ったポイントと、自分なりの見解を綴っていく事にします。




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1.社会起業とは?

カーター政権家で環境保護庁のアシスタント・アドミニストレーターとして「排出権取引」という画期的なアイデアを出したのが、社会起業家の父とも言われる【ビル・ドレイトン】だ。
彼は、産業革命以降「消費セクター」の発展と競争激化により、福祉や教育など「社会セクター」が断絶されてしまったことを問題とし、それらを再び繋ぎ直すために、当時務めていた外資系経営コンサルティング会社のマッキンゼーにいながら、【アショカ財団】を設立する。

【アショカ財団】はインドやインドネシア、ブラジルを初めとし世界中を尋ね歩き、優秀な社会起業家を発掘する。
厳しい面談を経て「アショカ・フェロー」に選ばれた人材には、資金面の支援だけではなく、一流のビジネス・アドバイスや、アショカのネットワークに加盟する権利が与えられ、結果としてその多くの事業が、広範囲に展開し、各国の政策にも影響を与えるという。

ドレイトンは、社会起業家を見るポイントとして、情熱やクリエイティブ、具体的な戦略と同時に、危機に対応出来る柔軟性が必要と説き、また、社会を変えるという偉業に対しては行動の持続力、なにより、誠実な人間性を求めるという。

社会起業家は、単に事業性と社会性の両立だけではなく、それが「社会を変える」為には大陸スケールで展開する仕組みを考える。
どんなに優れたビジネスモデルがあっても、それが一部の天才や人脈など個別の要素に成り立つものでは、他地域への展開は見込めない。だからこそ、持続可能性と共に世界で普遍的なインセンティブにつながる「収益性」を重視するのだ。


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2.ビジネスの価値

社会起業家は収益性を重視すると書いたが、それはあくまでも「儲かる事が前提である上での余力による社会貢献」という意味ではもちろんない。

「単なる金銭をばらまくだけのチャリティは穴の空いたコップに水を注ぐようなもの」と発言した【ジャクリーン・ノヴォグラッツ】の【アキュメン・ファンド】は、ソーシャル・ベンチャーに投資を行った後、それによってどれだけ具体的に社会改善が行われたかという「ソーシャル・リターン」を株主に説明する。

視覚/聴覚障害者向けに高水準の医療サービスを届ける【プロジェクト・インパクト】では「多層値段付与システム」という手法を用い、補聴器の価格を、国はもちろん一人一人の支払い能力に応じて変更し設定している。
これにより、医療を本当に必要としている貧困層に届けることを可能にしているのだ。

これらの事例から、資本主義の中で人々が失いつつある「お金は手段であって目的ではない」という当たり前の原則を貫いた上で、社会起業家たちはビジネスの手法を正しく用い、事業を推進しているという事がよくわかる。


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2.インディペンデントであるということ

途上国支援において真空地帯であった、中間層かつ経済の中心である小規模な会社などに経営支援やネットワークづくりを行うNPO【エンデバー】の代表【リンダ・ロッテンバーグ】は、その活躍に対してチリの大統領が45万ドルの寄付を申し出た際に「お上のヒモ付きのお金は自由に使えないので興味がない」と断ったというエピソードがある。

今やマス広告でもしばしば見る事が多くなった【国境なき医師団】は、赤十字メンバーとして紛争地域に入るも、「現地政府の干渉により満足に治療が出来ない」といった不満を持つ医師達が集まって立ち上げた団体だ。
その活動費の8割を個人や民間企業の寄付から賄う事で、独立性を保っている。

ホームレスのエイズ/HIV患者に住居を提供し、デイセンターにてカウンセリングやセラピー等の支援プログラムを実施する【ハウジング・ワークス】は、設立から7年目に市が突然、運営資金の半分にものぼる650万ドルの補助金をカットしたことで破産寸前に追い込まれた事がある。市長がエイズ問題に冷淡であることを批判していたことが理由だという。
一人の寄付提供者の提案から始めた古着店やブックカフェの経営を始め、収益を確保することにより経営を立て直したが、創立者の【チャールズ・キング】は、「公金に頼る恐ろしさを痛感した。お上の機嫌を取りながら恵んでもらう従来のNPO経営では、社会問題を解決できない」と語る。

「お金をどこから得るのか」ということそのものが、「誰の顔を見て、誰に利益を届けるべきか」という、活動の中身とミッションに密接に関係しているのだ。


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4.社会起業家の情熱

【ソッコルソ・クラウン】のホスピタル・プログラムでは、プロの役者を道化として小児病院に送り込む。
単に病院内のプレイルームで息抜きとしての娯楽を行うのではなく、重体の子と接したり、手術中に立ち会うことで子どもの恐怖を和らげる活動を行うこの団体では、プラスチックの赤い鼻にメイク、トランプやラッパの小道具を沢山持った道化師に、強い精神と状況判断、エゴの無い崇高な人間性を求める。

不登校の子ども達のために24時間ホットラインやスクーリング機能を持った新しい学校を作った【スマイルファクトリー】の【白井智子】は、松下政経塾での研究時代、校長に許可を得て千葉県の公立小学校にオーストラリア帰りの「転入生」として2ヶ月間潜入した。23歳の時である。
「子どもに問題があるのは、周りの大人たちに問題がある証拠です」と明言する彼女の人間性と誠実さが、突飛としか思えない行動にも、周囲と子ども達の理解を可能にしたのだろう。


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5.コンパッション

「社会起業家」や「ソーシャルビジネス」という言葉や、そう呼ばれる人/団体に嫌悪感を持つ人々が一定数いるような感じを私は受ける。それは主に、世の中所詮は金と信じて疑わない人間か、もしくは古くからの草の根NPOの人間であるような気がする。
後者の理屈として「人助けにビジネスなど」「それでは解決できない分野もある」という思想なのか、それは時に、メディアから脚光を浴びつつある社会起業家たちと、古くから地道に活動して来た自分が認められなかったことを比較した、不満や嫉妬ではないのかとも感じる事がある。

本書の著者である【渡邊奈々】は、あとがきに「無償奉仕は、日本人には体質的になじみにくいだろう、でも、ビジネスにつながるソーシャル・アントレプレナーシップならば受け入れられやすいのではないか」と思い、この概念を日本に持ち込んだと書いている。

あくまで、彼女も社会起業家が全ての問題を解決すると礼賛しているわけではない、ただ、彼女の友人が口にした「日本人には自分より恵まれない人に対するコンパッション(単なる同情を超えた共感)が足りないのではないか」という言葉と、90年代日本の「ビジネスと成長、金銭価値が全て」という感覚の現実の間を埋める、次の時代に適正な流れを見極めた新しい手法だったに過ぎない。

この本が書かれたのは2005年、2011年を迎えた現在は、東日本大震災という歴史上未曾有の悲劇を超え、これまでの資本主義への疑いと違う新しい価値観を探す動きが加速した。
困っている他者への共感が、寄付やボランティアという行動を自然に後押しした。
日本人の中に「コンパッション」が生まれたことは、日本のソーシャルアントレプレナーシップが、次のステージに進んだことを感じさせる。

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2011年9月15日木曜日

JG11日目『スティーブ・ジョブス 脅威のプレゼン』

JustGiving11日目。

福岡に戻ってから暫く経つとそれなりにお誘いも増え、今後の仕事の事を考えると、人に会って話をしたいなと思いついつい足を運んでしまうのですが、課題の方が追われてしまいます。
ちょうど今日、福岡の若手NPO職員の集まりで「認定NPO法人制度」に関しての勉強会として、ミニ講師をしてきましたので、そこと絡めてこんな一冊。

本は3部構成になっていますが、後半はより細かくテクニカルな内容になっていくので、今回は第一幕にある「ストーリーを作る」から、少しNPOでの活用を想定した形で、良きプレゼンテーターになる為の基礎をシェアしていきたいと思います。




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シーン1)計画はアナログでまとめる

スティーブ・ジョブスのプレゼンは劇場型であり、さながら映画のようだと評されるが、優れたプレゼンテーション・デザイナーに共通しているのは「まず紙と鉛筆のスケッチから始めること」だという。

パワーポイントのソフトを立ち上げる前に多くの時間をストーリーづくりに割けば、クリエイティブなデザインは自然に決まってくる。逆に最も人の印象に残らない手法は、箇条書きと文章から作り始めてしまう事。語るのはスライドではなく、人だ。

特に、目に見える商品を売るよりも、社会問題とその解決を訴えかけるNPOにとっては、説明よりも人が当事者としてストーリーを語る事の方が重要であると言えるだろう。


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シーン2)一番大事な問いに答える

プレゼンテーションの聴衆が求めているものは何か?それを第一に考える必要がある。
商品やサービスを売り込むのではなく、そもそも「なぜその話を気にかける必要があるか」という問いに対して、明確な答えを提示しなければならない。

複雑な専門用語を用い、自分たちの活動が如何に素晴らしいかを「説明」するプレゼンは、NPOの世界では決して珍しくはないのではないか。
それは「自分たちは良い事をしている、理解出来ない方がおかしい」というような驕りとも取れる。
簡単に言えば「相手の立場に立っていない」のだ。

「人は基本的に自分に関係のない事には興味が無い」これは果たしてドライで悲観的な捉え方だろうか?寄付やボランティアは本質的に自己犠牲ではなく、問題が自分ごとになるからこそ、行動しようというエネルギーになる。
重要なのは、自分達の活動の正しさを証明することではなく「なぜそれは問題か?」という問いに答え、人々の生活や関心と社会参画を繋げる架け橋になることではないか。



iPhoneを発表するスティーブ・ジョブス

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シーン3)救世主的な目的意識を持つ

ジョブスがかつてペプシコの社長であった、ジョン・スカリーを引き抜いた時の一言が逸話として残っている。
「一生、砂糖水を売り続ける気かい?それとも世界を変えるチャンスにかけてみるかい?」

良いプレゼンテーターとは、溢れる情熱を持つカリスマだと言われる。
本人がどうしても達成したい明確なビジョンに向けて、やりがいのあると思える仕事を続けていなければ、どれだけ理論整然としたプレゼンにも人は心動かされないだろう。

私たちは「なぜ自分がそれに真剣になるか、どうしてもやらなければならないか、もしくはやりたいか」ということを、人に強く訴えかけるだけの目的意識を持っているだろうか。

「クレイジーな人たちがいる 」という言葉から始まる、あまりにも有名なAppleのTVCM


 「Think Different. 」
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シーン4)ツイッターのようなヘッドラインを作る

細かい文字がA3両面表裏にびっしりののニュースレターでは、何が大切なのかを見つける事すらできない。
自分達の団体、ミッション、ビジョン、サービスをほんの一文で表すヘッドラインを作る必要がある。簡潔で、具体的で、受け手のメリットが示されていれば尚良い。

そしてその一言が生まれたなら、プレゼンテーションはもちろん、マーケティングのあらゆる場所から人との会話に至るまで、繰り返し同じヘッドラインを使い続けていくべきだ。

以下に、Apple+他の著名企業で使用された有名な「一言」ヘッドラインを転載する。

・アップルが電話を再発明する(Apple−iPhone)
・世界で最も薄いノートパソコン(Apple−MacBook Air)
・1000曲をポケットに(Apple−iPod)
・グーグルなら、1クリックで世界の情報にアクセスできます(Google)
・スターバックスは職場と家庭に挟まれた第3の場所を創る(スターバックスコーヒー)
・各社員に1台、各家庭に1台、PCを普及させたいんだ(マイクロソフト)


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シーン5)ロードマップを描く

ロードマップはその言葉通り、「聞き手を話の迷子にさせないための地図」だ。
始めに全体の見通しを示し、ポイントを明確にする、順番に詳しく説明し、最後に改めてまとめる。

ここで特に効果的だと強調されるのは、「3点ルール」と呼ばれる。一般に人間が短期的に覚える事ができる項目は3であるということは、学会の論文や軍隊の構成でもその実用性とインパクトが証明されており、ジョン・F・ケネディや、バラク・オバマのスピーチも、3センテンス、またその1文で話す内容も3であることが多いという。

ポイントを絞っていくことにより、本当に伝えたいメッセージの優先順位もつけていけるのではないか。


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シーン6)敵役を導入する

ジョージ・オーウェルの「1984年」という小説がある。ビッグ・ブラザーという独裁者を中心にした、双方向テレビジョンでの監視システム下では、言論/思想/行動さえも統制されるという話だ。

Appleは実際の1984年に、当時コンピューター業界全てを飲み込もうとしていたIBMの「ビッグ・ブルー」という愛称をなぞらえ、独裁者という敵にしたてあげるCMを創った。

 



敵役を設定するという、古典的な物語や宗教にも似た手法をとることで、そこに問題を投影することが出来るだけでなく、対比として自らの信念を明確にすることも可能となる。戦略の結果として味方=ファンを獲得することが出来る。

NPOの活動において「敵」という表現に違和感があるなら、「社会課題」としてはどうだろうか。
アル・ゴアが「二酸化炭素による地球温暖化」という悪玉を明確にして、国際社会の支持を集めた事には、非常に大きなインパクトと価値があったように思われる。


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シーン7)正義の味方を登場させる

敵を設定した後にやるべき事は「正義の味方」を投入することだ。社会課題を解決する魅力的な提案と言い換えても良いだろう。

2006年にMacが放映したCM「Get a mac」の日本バージョンは、お笑いコンビのラーメンズが起用された。
Windowsを「パソコン」、Macを「マック」という登場人物に当てはめたこのCMでは、パソコン役はぎこちなく仕事ばかりで融通の効かないキャラクター、マック役は初心者に優しく楽しめるフレンドリーさをウリにしている。



日本ではライバル企業に対して、あからさまにネガティブなイメージをつける広告を打つ事は珍しいが、これによってMacの魅力がより簡単に際立つ事がわかるだろう。

必要なのは「課題」と「解決策」を同時に提示することであり、しかもそれがわかりやすいことだ。

今の社会のどこに「痛み」があって、それを解決するとどのような「癒し」や「素晴らしい未来」があるのか。
NPOに限らず、社会を今より良くする方向に働きかけるつもりでプレゼンテーションする時には、常にそのストーリーを相手からの目線で描いておくことが必要になるだろう。


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2011年9月14日水曜日

JG10日目『「新しい公共」宣言』

鳩山由紀夫首相(当時)が2010年に言葉として取り上げ、国家戦略の柱とした「新しい公共」は、ソーシャルビジネスやボランティアの活性化、また6月に成立したNPO法改正&新寄付税制にも大きな影響を与えました。
マスメディアにはほとんど取り上げられることがありませんが、震災以後、 NPOだけでなく政府や民間企業の様々な取り組みを見るに、それぞれの動きがこの概念に向けて加速し、また繋がっているように感じます。

しかし同時に、この言葉の意味は広く分抽象的で、「NPOの分野にいるから」ということで周りの人から説明を求められても、なかなか伝えて理解してもらうのに苦労する経験が僕にもあります。
そこで今回はこの実現の為の制度・政策の在り方などについて議論を行うための会議であり、鳩山首相本人もほぼ毎回出席したと言われる「新しい公共円卓会議」(全8回)のまとめでもある『新しい公共宣言』について、改めて考え、捉え直してていきたいと思います。

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■はじめに

まず、新しい公共のことを話題に出す際に、「(内容については賛同だが)全く新しくも何とも無い、当然だ」という人が少なくないように感じるが、『新しい公共宣言(以下、宣言とする)』の中では「はじめに」の中で以下のように断っている。
(以下、青字は文中から引用)

これは、必ずしも、鳩山政権や「新しい公共」円卓会議ではじめて提示された考え方ではない。これは、古くからの日本の地域や民間の中にあったかが、今や失われつつある「公共」を現代にふさわしい形で再編集し、人や地域の絆を作り直すことにほかならない。

つまり「新しい公共」は単に新しいものを上から導入しようとするものでも、かつてのムラ社会を賛美するものでもない。
その上で、「京都マンガミュージアム」や、徳島の葉っぱビジネス「いろどり」における地域の力、また「ビッグイシュー」のケースにおける、市場の原理に共感とコミットメントが付与された実践的な取り組みを紹介し、現場からの広がりを期待・模索するものであったことがわかる。


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■「新しい公共」と日本の将来ビジョン

では、これが目指す社会の姿とはどのようなものか。

「新しい公共」が作り出す社会は「支え合いと活気がある社会」である。すべての人に居場所と出番があり、みなが人に役立つ歓びを大切にする社会であるとともに、その中から、さまざまな新しいサービス市場が興り、活発な経済活動が展開され、その果実が社会に適正に戻ってくる事で、人々の生活が潤うという、よい循環の中で発展する社会である。

ここのポイントは大きく2つに分けられるだろう。

一つ目は、「全ての人に居場所と出番があり〜」という箇所であり、これは明治以降の近代化の中で「公共=官」となってしまった国民の意識が、再び当事者として自立と周囲への恊働の意識を持ち、広義の政治=政(まつりごと)=まちづくりに参画していける状態を述べていると考えられる。

二つ目は、あくまで「活発な経済活動」という視点を持ち、変化を単に個人の善意に基づく慈善・道徳概念として求めるのではなく、現実的な提言がなされていることだ。
その説明においては、日本に古くから存在したとされる「稼ぎ」と「つとめ」の思想を例にあげ、それを現代的に「経済的リターン」「社会的リターン」という言葉で置き換えており、その両立は可能であり、むしろそこからこそ新しいサービスが生まれるのだとする。

昨今のグローバリゼーションの中では、短期的利益のみを追い続けることが宿命となってしまっており、その結果、環境や人材育成が持続不可能な状態となり、これまでの資本主義そのものが限界に来ている。
これは、東日本大震災を経た我々が、原発事故や連日のマスコミ報道から更に生々しく実感せざるを得ない事実である。

また宣言には「ソーシャルキャピタル」という単語もたびたび使用されている。
日本語で「社会関係資本」と訳されるその概念は、人々の相互信頼により社会コストは低く、同時に住民の幸せ度が高いという状態の指数を表し、「ソーシャルキャピタルの高い(低い)地域」等の使われ方をする単語である。
これまでの行き過ぎた個人主義から生まれた、経済的自立と背中合わせの孤独という側面から、日本社会が目指す新しい道を示しているように思われる。

図は「新しい公共」のイメージモデル

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■「新しい公共」を作るために

宣言では、「新しい公共」は当事者が役割を持って参加する「協働」の場であるとし、その主役は一人一人の国民であり、企業と政府にもそれぞれの立場への方策を提案している。
ここからは、具体的にそれぞれに対しての文言について見ていく事とする。

(1) 国民に対して

一人ひとりが、人の役に立ちたいという気持ちで、小さな一歩を踏み出す。そのことこそが「新しい公共」の基本だ。

と前置きした上で、東京都三鷹市の小中学校と幼稚園での異年齢ボランティアと地域への広がり、長野県で1950年代から続く「地域保健指導員」による地知的な健康管理と大幅な医療費削減、兵庫県丹波市の母親コミュニティによる地域医療保全活動など、具体的な取り組みを紹介している。
そこに通じる力は、「自分たちの社会幸福は自分たちで作る」という人々の意識であり、奉仕活動という意味に貶められてしまった「ボランティア」の意義が、本来の力を取り戻しつつあるという証明ではないか。

(2) 企業に対して

企業には、「あくまで市場の原理は非情であり、資金は社会的リターンのの大きな方に流れる」ということを認めた上で、現代においては、社会貢献活動による新たな出会いと刺激の創出や、CSR的観点での社会的善を行う事が競争力となり、既にその事実に気付いている企業も少なくないと説く。

企業には、その持続可能性を高めるためにも、社会貢献活動やメセナ活動を通した社会との関係の重要さを認識していただきたい。

ここでも、システムとしての営利企業の立場を理解し、モラルや情に訴えかけるのではなくインセンティブを説明することで、合理的な選択の結果として、企業も社会との関連性を無視しては、その構成員の一部として存続していけないことを明らかにしている。

(3) 政府に対して

公務員制度改革により、官民や省庁の垣根を越えて、社会全体からもっとも専門性が高く勤勉かつ有為な人材を登用して、行政の質の向上を図るべきである。税金の無駄遣いを根絶するとともに、事業仕分けなとの新たな予算編成手法も活用して、財源の適切な配分につとめなければならない。政と官が協力して、これまでよりもっと大胆に、情報公開、規制改革、地域主権等の推進を断行することを強く要望したい。

政府には、そのものの立場からでありつつも明確に既存のシステムを批判し、単に「ムダを減らす」というような努力目標ではなく、具体的にどこにどうメスをいれるべきかが書かれている。
更に注目すべきは、民間から提案のあった法改正案への強力な後押しである。

「新しい公共」の基盤を支える制度整備については、税額控除の導入、認定NPOの「仮認定」とPST基準の見直し、みなし寄附限度額の引き上げ等を可能にする税制改革を速やかに進めることを期待する。

この法案については、政権の不安定と国会のねじれにより、一時実現が不可能かと思われたが、超党派の議員連盟や、「NPO法人シーズ・市民活動を支える制度をつくる会」を中心とした「NPO/NGOに関する税・法人制度改革連絡会」の尽力により、2011年6月に無事に通過した。
「国民による事業仕分け」とも表現されたこの制度自体が、NPOに国民のお金=政府の財源である税金が直接流れ込むという事であり、新しい公共の実現には、市民の自主的選択とNPOの活力が必要不可欠だという判断が見てとれる。


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最後に、宣言の最後にある言葉を紹介する。

人間の中にもともと存在する、人の役に立つこと、人に感謝されることが自分の歓びになると いう気持ちと、そうした気持ちに基づいて行動する力。それをもっている人間は、公共性の動物だといえるかもしれない。「新しい公共」では、国民は「お上」に依存しない自立性をもった存在であるが、それと同時に人と支え合い、感謝し合うことで歓びを感じる。それが「新しい公共」が成立することの基盤である。

鳩山由紀夫氏が所信表明演説で語った「居場所と出番のある社会」「人間のための経済」「国民のいのちと生活を守る政治」
そして政府メンバーはもとより、民間企業の社長、大学教授、NPOの代表、自治体の長という、異なる立場の識者が一同に集まり、対等な議論を重ねてつくりあげた「新しい公共」の小さな種。

これらが浮ついた理想論に終わるか、より多くの人々の心の琴線に触れる事ができるか、それは既に当事者となった我々自身一人一人が、実現に向けて行動する事でしか判断することはできないだろう。

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新しい公共宣言(PDF) 
www5.cao.go.jp/npc/pdf/declaration-nihongo.pdf
新しい公共円卓会議 http://p.tl/oZ6R
新しい公共推進会議 http://p.tl/FTD7
第174回国会における鳩山内閣総理大臣施政方針演説  http://p.tl/Tieh

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2011年9月13日火曜日

JG9日目『あいち協働ルールブック2004』

JustGivingチャレンジも9日目、現時点で一日分ビハインドです。(東京出張分は除く)

早速ですが、内閣府の「平成十八年度市民活動団体基本調査報告書」によると、NPO法人の総収入における行政からの資金(委託や補助金事業)の割合は、40%を超えるところが半数近く。また80%というところも24%に上るそうです。

政府や自治体だけでは対応出来ない多様なニーズに対し、新しい公共サービスの担い手としてNPOが期待されていると捉える事ができますが、あまりにもそのバランスが適切でない場合は、本来自発的であるNPOの活動が行政中心のものになり、本来のミッションと市民のニーズを見失ってしまう危険性、また財務的な自立を阻害し「予算がなくなれば終わり」という非持続的な組織体質になってしまう事態さえ考えられます。

今回は、あくまで行政からの資金の流入そのものを否定するのではなく、それがいかに効果的に活用されるかという視点で、委託や補助金事業を、ここ数年使われることの多くなった「協働」の一つの形態として捉えました。
そこでNPOと行政の最適なコラボレーションのあり方を巡り、愛知県が地域NPOや社会福祉協議会と共に行った先進的な取り組みとして、2004年に策定した『あいち協働ルールブック』をご紹介します。


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概要)

まず前提として以下の文章があり、あくまで義務づけではなく当事者の実践から、事実上のスタンダードを目指している。(以下、青字は本文から引用)

このルールブックは、NPO と行政が対等の立場で、協議、合意した 事項を取りまとめたもので、全てのNPOに遵守を義務付けるのではな く、協働に当たって、愛知県と賛同するNPOが最大限の遵守に努めることとしています。

次に、協働の意義であるが、ここではあくまで単なる2セクター間のコラボレーションという枠組みだけで考えるのではなく、それが結果として地域住民の自治参画を促す、広がりを持った価値の取り組みであることがわかるだろう。

○自立型地域社会の構築
○県民の社会貢献や自己表現・自己実現の意欲を活かす場の拡大
○新しい社会ニーズの発掘と課題解決
○公共サービスの質の向上
○公共サービスの担い手の多様化


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原則)

協働にあたっては、当然のことながらNPOが行政の下請けではないという「対等の原則」や、それぞれの立場の違いを認識しながら対話を進める「相互理解」等が記載されているが、中でも重要と思われるのは「評価の実施」である。
一般に補助金等の事業は、交付審査の時までは緊張感があるものの、いったん始まってしまえば行政とNPO双方に「後は適切に報告を行えば良い」という感覚が抜けず、アウトカムの確認が曖昧になりがちのように思えるが、このルールブックでは以下のように明言する。

目標とした成果が得られたかどうか、協働の効果が生まれたかどうかの観点を中心に、協働事業の結果を相互に評価・点検し、明らかになった課題を次の協働に活かすことで、県民の納得が得られるよりよい協働をめざす。

また他に特徴的なのは、NPO、行政それぞれが留意する点として、前者には「NPO に対する適切な理解と配慮」として有給職員やボランティアが混在する組織体制への正しい理解、また後者には「公の資金を使う自覚と責任」として県民に対するアカウンタビリティ(説明責任)の意識を求めていることだろう。
これは当たり前のようなことだが、逆に言えばこれまで双方において理解が不十分であったという事実を見てとることが出来る。

下図は本誌から



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基本姿勢)

協働はPDCAによる改善プロセスの原則に基づき、行うこととされる。以下にそれぞれの段階において求められる姿勢を、いくつかピックアップして列挙する。

◎Plan(計画)
・行政とNPOは、双方の良さ、得意分野を活かすために、お互いの立場の違いを尊重する。
・NPOは行政への一方的な批判や要求を行うだけにとどまらず、課題解決に向けて建設的な意見交換や提言を行うよう努める。
・できるだけ早い段階からプロセスを共有することで、 NPOと行政が事業実施の目的を相互に共有できるよう努める。
・行政は、NPOからの施策・事業提案がより有効なものになるように、参考となる資料や情報を分かりやすい形で積極的にNPO等に提供する。

◎Do(実施)
・行政は、委託先の選定に当たって、選定基準の多様化や企画競争の実施方法に工夫を凝らし、できる限り多くのNPOに機会を与えるよう努める。
・行政は、補助を受ける団体の固定化や行政の過剰な関与などによって、NPOの自立性や自主性を損なうことのないように留意する。
・NPOは、その専門性を活かしつつ、マネジメントにおいても信頼が得られるよう努力する。
・NPOは、公の資金を使うことに伴う責任を自覚し、透明性、効率性、有効性の向上に努める。
・行政は、できるだけ手続きの簡略化に努める。

◎Check/Action(評価・改善)
・ 必要に応じて事業実施後に成果報告会を開催し、外部の者の意見も聞きながら評価を行う。
・ 評価を実施した場合は、課題や問題点を明確にし、次の協働の改善に活かすよう努める。


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更にこの後、ルールブックを基に2009年作成された『協働ロードマップ策定手順書』を基に、環境部、農林水産部、健康福祉部、など県政各分野における、より具体的な特定課題の協議から、連携して公共サービスの向上を目指す『協働ロードマップ』が現在策定中です。

『協働ロードマップ策定手順書』には、より細かに協議の場のスケジュール管理や、ファシリテーターの役割と会議の場づくりについてなど詳しくまとめられており、一つのNPO内部での組織体制づくりにも役立つのではないかと思われます。
PDFで量も多くありませんので、ぜひご一読を。


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あいちNPO交流プラザ「あいち協働ルールブック2004」http://p.tl/Mkir
あいちNPO交流プラザ「協働ロードマップ策定手順書」http://p.tl/SlWM

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2011年9月12日月曜日

JG8日目「利益が上がる!NPOの経済学」

JustGivingチャレンジも8日目ですが、部屋の片付けや打ち合わせなど、ちょっとでも他の予定が入ると、一気に身動きが取れなくなって遅れてしまいます。。
そして今後も他の課題が盛りだくさん。どこを削る or スピードアップすればいいののかの判断も、きっと学びの一つ。

そんな今回のテーマは、もう何度も読み返した『NPOの経済学』大阪大学大学院教授から大蔵省・慶応義塾大学教授を経て、現在嘉悦大学副学長の跡田直澄氏の著書です。
もろもろNPOやファンドレイジングへの知識や見識を多少は身につけた今、改めて読むと非常に感慨深いものがある1冊でした。

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まえがき)ボランティアという幻想

まず跡田氏は、アメリカでの「セサミワークショップ」(アニメ番組セサミストリートの制作を行う)「リンカーンセンター」「メトロポリタン美術館」「ハーバード大学」等の例を挙げ、それらがNPOとして多くの寄付を集め運営している事、同時に事業として事業を成り立たせていることを説明する。

イギリスとアメリカでは、1970年代にそれぞれサッチャー政権/レーガン政権が、社会保障予算をばっさりと削減してしまったことにより、政府が手つかずにしてしまった社会課題分野に対して、NPOは民間からマネジメントや資金調達の手法を学び、成長していった。

それに対して日本では、1995年の阪神淡路大震災がNPO元年と言われているが、それがボランティアの延長として認識されてしまっている現実がある。
また、しばしば「日本は社会主義の国だ」と揶揄されるように、長い間政府が公共事業や福祉から手を引かず、「公共はお上が担うもの」という認識が抜けなかったという事実もここに影響している。

ミッションを軸とするNPOのサービスが民間企業と競争可能な水準を持つようになれば、結果として民間セクターは透明性を増し、また行政セクターもスリムに成らざるを得ないだろう。そのためには「NPO=ボランティア」という幻想からの脱却が必要だというのが、この本の中での一貫した主張だ。


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第1章)NPOのビジネスモデルを考える

次の章では、実際に利益をあげて持続出来る事業型NPOの工夫について、実例を基に考える。まず跡田氏が一つの形として提案するのは、以下の図のモデルである。


NPOに関連会社を作り(ここでは、障害者がパンの製造を行うNPOの工場と、それを販売する民間企業としてある)利益をNPOに寄付する。同時にNPOと会社の職員を重複させることで、人件費を企業側の経費とすることができる。
*注:寄付の所得控除もあり法的には問題ないが、2011年6月30日〜施行の認定NPO法人制度の役員要件には注意が必要

また下図のように、NPOの安定的な経営には「事業収入」「補助金・助成金」「寄付・会費」がそれぞれ1/3ずつであることが理想的であるとし、補助金・助成金ありきや、損益分岐点を基準としてしまうコスト管理ではなく、積極的にファンドレイジングを行っていく必要性を訴えている。


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第2章)この「ニッチ(隙間)を狙う」

アジアの中ではNPO先進国として知られるタイは、国際化と共に1980年代に流入してきたエイズ問題に対し、政府が対応出来ない「隙間(ニッチ)」な分野の問題として、海外NGO/国内NPOの活動が活性化した。
その際の大きな特徴として、企業の社会貢献活動である「メセナ」や「フィランソロピー」の概念が、事実上の王制の存在、王様に寄付をする という感覚で促進された。

対して、日本では福祉や公共事業の分野で「PFI(Private Finance Initiative)=民間資本主導による公共サービスの拡充促進方策」が採用されている。

跡田氏は、もしこの大きな流れの中、成功するNPOの事業として考えるならば「高齢者への健康を配慮した配食サービス」しかも民間が主なマーケットとするであろう富裕層は、初めからターゲットから外したものが有効だろうとしている。
もしくは、町おこしや環境アセスメント(評価)をきちんと踏まえた上で、地域住民の声を自治体とつなぐコンサルティングサービスを行うプロNPO集団にも、大きなニーズと可能性があることを説いている。


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第3章)「寄付市場」を創り出す

NPOが安定した財源を確保していくのに欠かせない収益源は寄付だ。

日本にはよく「寄付文化が無い」ということが語られるが、かつての大阪商人は自費の寄付で「橋」という公共インフラを設置した。
これは単に篤志家ということを超え、交通網の発達と商業の活性化という中長期的利益を得た事から、現在で言う「SRI(Socially responsible investment)=社会的責任投資」であるとされる。

こうした文化は、戦時体制以後の中央集権化、そして第二次世界大戦後に確立された徴税システムで「富の再分配機能は政府の一手に集められる」という考え方のもと、失われていった。

その後1980年代後半に、日本企業の海外進出による地元住民からの寄付依頼の機会が増加した事、またバブルの時期も重なり、1990年経団連の「1%クラブ」「企業メセナ協議会」が発足し、フィランソロピー元年とも呼ばれたが、バブル崩壊により収束してしまい、再び日本の寄付文化が復活する機会を逃してしまったという。

跡田氏は「寄付は投資(または投票)である」と表現し、投資であるからには、株でいう「キャピタルゲイン(譲渡益)」と「配当金」にあたるインセンティブを付与する事が必要であるとした。
それはもちろん直接的な金銭的リターンではないが、時に社会的名誉や、自己効力感、SRIのような中長期的見識のある自己利益、もしくは「CSR(Corporate Social Responsibility)=企業の社会的責任」という視点から、社会信頼コスト支払いという形でのリターンが考えられる。

既存の一括集金型/釣り銭型/共同募金等の顔の見えない寄付(間接寄付)から、使途や受益者の顔が見える寄付(直接寄付)へと移行することで、NPOはその力を十分に発揮し、以下のような図の中で、まえがきに書いたような「他セクターを浄化する力」を持つ事が出来るだろうとされている。



第4章)NPO業界の足下を見つめる

この本の最後には、これまで提起された問題解決と理想の実現を目指すNPOが、直面するであろう課題について書かれている。
それは端的に2つ「収益事業への課税」と「寄付の税控除」である。

前者についてはグラフにして可視化し掲載されているが、日本のNPOは一般企業とほぼ同じ扱いであり、アメリカやイギリスのような非課税措置は揃っていない。


また後者についても、小さな政府による「国庫助成金の削減と民間寄付市場の拡大」は、政府にとっても必要なことであるが、現状、個人の寄付/法人の寄付相続財産の寄付いずれについても控除の制度はほぼ考慮されておらず、NPOが寄付を集めることは制度上非常に難しくなっている。

これらを解決し、またNPOセクター全体を押し上げる政策として2001年から実施されている「認定NPO制度」とそれにかかる「寄付税制」であるが、実際のところほとんど現場で活用出来るものにはなっていない。

まずは現場レベルから、民間の財務や営業といった分野での優秀な人材を確保し、スキルやノウハウをもった転職/引退世代と、新しい価値観や志の高い若手起業家の台頭から、変革を起こしていけることを期待しまとめられている。

*注:本書は2005年に書かれているが、2011年現在、念願の上記2制度が大幅な拡充をされ改正された。またこれについては、別途一つの記事の中で説明させて頂きたいと思う。

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2011年9月11日日曜日

JG7日目『他人と暮らす若者たち』

JustGivingチャレンジ7日目!最近眠気ではなく、肩が凝りすぎてついつい横になってしまいます・・・。
疲れない本の読み方とか、姿勢・目線の位置等をご存知の方はご教授ください。

今回ピックアップさせて頂いたのは、寄付先のコレクティブハウジング社とのテーマ的近しさから「シェアする暮らし」について、若者の暮らしへの意識やその背景を、都内居住者のインタビューや海外のフィールドワークで非常に具体的に描き出した一冊です。



今回の記事では「ルームシェア」「コーポラティブハウジング」「コレクティブハウジング」等の居住形態や、その差異については特に触れず、主にそれらの根底に共通して流れる概念としての「他人と暮らす」ということについて、心に響いた箇所を拾っていきました。
また、著者は別にシェアハウス礼賛の立場ではありませんし、本文中には他人と暮らす事のデメリット等もきちんと掲載されていますが、ここではスペースの都合上あまり触れられていないことをお伝えしておきます。

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1)節約志向と快適思考

シェアで暮らす生活において、一般的に最もわかりやすいロジックは「経済的利点」である。共同住宅において規模の経済が働くことで、一人暮らしに比べると生活コストが下がっていくことを、本書の中では二つの視点から見ている。

一つ目は「節約志向」で、一定レベルの生活水準をなるべく安く手に入れることを目的としており、もう一方は、同じ出費で出来るだけ快適な居住を手に入れたいと思う「快適志向」だ。
後者の場合、一人暮らしではなかなか実現し得ない、広いキッチンや快適な洗面所を創造してもらうと分かりやすいだろう。

但し、ここでの「快適志向」の場合は、必ずしも経済的なメリットを差しているだけではないと説明される。そこには、家族の延長・代替としての役割、時には同世代であることで、家族以上に分かち合える楽しさや、受け止めてもらえる感じがあるのだという。


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2)他人と暮らすことは面倒か

シェアする上での困難は、他人との生活観の違いが、清潔かズボラか(サービスレベルの期待の違い)コミュニティに強く参加するか一人を好むか(コミットメントレベルの違い)として、大きく差異と不満の表れるところであり、またそれと同時にシェア向きの物件が少ないというハード面の環境、周囲の無理解と偏見というソフト面での環境課題があるという。

周囲の理解に対して、本書では自身もシェアハウス経験のある著者が、よくある質問に対して更に問い直す形でレスポンスしている。
例えば「他人と暮らすのは面倒ではないか?」という質問には「一人暮らしは面倒ではないか?」「家族と暮らすのは面倒ではないか?」というように。

確かに、シェアハウスでのプライバシーの確保や、こまかな価値観の相違はストレスになる事もあるだろう。しかし、一人暮らしの方が家事の頻度や経費のコストパフォーマンスは低いし、家族は世代が違えばこそ理解し合えない場面も多い。
結局のところ「面倒の種類」が異なるだけであり、それよりもここでは「家族であることイコール、理解し合えるはず・面倒なく暮らしていけるはず」という前提の側に疑問が投げかけられる。

離婚/晩婚/非婚が珍しいことでなくなっている社会では、夫婦だからと過度な期待をせず、友人だからと過小に評価せず「揉める」ことを前提にして、いかに「うまく揉める」かが重要であり、家族であれ他人であれ起こりえるトラブルを最小限に留めるノウハウと制度が必要としているとある。

写真はコレクティブハウス「スガモフラット」の食事の様子

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3)共同生活者という関係

これらの問いに対する文中の言葉が、非常に深い含蓄を持っていたように感じたので、ここに、そのまま引用する。

もし「自由」を何でも自分の思い通りにできることだと考えるならば、他人との暮らしに「自由」は無い。しかしそれでは、「自由」は夫婦の間にも家族の中にもないことになってしまう。
また、もし「自立」を何でも一人で賄うことだと考えるならば、他人との暮らしに「自立」はない。しかしそれでは、やはり「自立」は地上のどこにも存在しないことになる。
「親密さ」を血縁や性愛から自然に溢れてくるものだと考えるならば、他人との暮らしに「親密さ」はあり得ないだろう。

けれども、「自由」を他人との対話のなかで自分を認めてもらうことだとすれば、「自立」を程よく他人に頼り支え合うことだとすれば、「親密さ」を共に生活を営む中で相手に感じる敬愛の情だとすれば、それらはみな、家族も含めた他人との生活のなかにしかない。
その意味で、他人との暮らしは、一人で住むより家族と住むより、ずっと自由で、自立した、親密なものになる可能性を持っているのではないだろうか。

実際にシェアハウスの住民にインタビューし、傾向として判明した事という事は、事前にルールを決めてペナルティを定めておく方法は、少なくとも小規模なコミュニティには向かず、実際に暮らし始めてからそれぞれの要求や参加度を知り、問題が起きた時に話し合いコミュニケーションを重ねていった方が、結果として良さそうだということだ。

「問題が機械的に迅速に解決されるよりも、それぞれが納得して気持ち良く暮らしていけることの方が重要だ」という著者の言葉に対し、都会のマンションに住む者ならある種当たり前のようになってしまっている、何かあればすぐに「マンションの管理人にクレームを伝え、指導を求める」という解決手法に、改めて空しさを感じる人も少なくないのではないか。


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4)新しいコミュニティが持つ機能

本書の終盤では、二人の専門家の思想から、僕たちが他者とより良く暮らしていくことの価値が表現されている。

一つは「心の病」を専門家のものとして相談商品化するのではなく、他人と暮らす中での日常の悩みを自分たちの手に取り戻すこと。
「個」の尊重のあまり、身近な他人と対等にぶつかる機会は失われてしまったが、自分の価値観を相対化し、その上で他者と協力して生きていく事を学ぶ機会としてのシェアだ。

そしてもう一つは、近しい人間とだけ集まり、そうではないものを排斥する集団が「コミュニティ」と表現されがちなことについて「ガバナンス」という概念を中心にすることを提唱していることだ。
他者とぶつかり合いながらそれぞれに納得のいく落としどころを探し、自分たちのことは自分達で決め、またその決定に従うという、民主主義の基礎がそこにあり、広い意味での政治とも言えるその考え方は、一つ屋根の下で暮らす集団から、地域、また国へと広がっていけるだろう。

そういう意味で、他人と暮らす「シェア」という形態には、「単に不景気だから経済的負担を軽く手法として流行っている」という実益以上に、「家族」ではなく「他人」でもない、「共同生活者」とのかかわり合い、また第三の暮らし方として、僕たちの価値観を一変させる、新しい社会への入口の可能性を持っていると言えるかもしれない。


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番外編)もちより

最後に、自分が関わっている「シェア」そして「コレクティブ」についてのプロジェクトについて紹介します。

■自分が主催者となっている『物々交換のmono-cle』(福岡)
http://www.joy-box.info/mono/
現状、運営上の都合で、ポイント制を利用し、本一冊:本一冊の交換性になっていますが、出来れば今後はもっと自由なものにしたいと思っています。既にストックがあるところから“持っていく”のではなく、家から持って来てそこに“置いていく”ような、本を持ち寄って共有する「みんなのクラウド本棚」のようにしたいのです。
ただ、僕が暫く運営から離れていた事もあり、上記のような方向性で行くのかも含め、組織的な大きな見直しが必要な段階になっていますので、今後新たに関わりたい人は募集中です。

■今回の寄付先である『NPOコレクティブハウジング社』(東京)
http://www.chc.or.jp/
コレクティブハウスとシェアハウスは、その形態としては異なるものですが、今回紹介した本の中で書かれていた「他者と対話して自発的に暮らしをつくっていく価値」に関しては、かなり多くの部分で通じているのではないかと思っています。

そのような様々な事例を取材した『シェアする暮らしのポータルサイト』
http://share-living.jp/

そして10月に行われる『コレクティブハウジング全国大会』
http://www.chc.or.jp/conference/
なんと!この著者である久保田裕之さんも、当日は一参加者として会場にいらっしゃり、またプログラムにも少しご協力頂く予定です!!


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もっと深く学びたい、読んでみたいという方はぜひお買い求めください。
集英社新書『他人と暮らす若者たち』 synoikismos.net  http://p.tl/488Y

このチャレンジに共感した!役にたった!応援する!と言う方はぜひ
JustGivingからご寄付をお願いします* → http://p.tl/L-o9

2011年9月10日土曜日

JG6日目『演出についての覚え書き』

JustGivingチャレンジ6日目、出張で空いてしまった分は、10月に押し出して先送りするか、1日2冊ペースで取り戻せるか悩んでいます。23〜25日にも東京で泊まり込みの研修があるので。

さてさて、ともあれ今回の本のご紹介ですが、演劇の世界でも特に脚本家や俳優ではなく「演出家」に求められるエッセンスを一言×130の項目にまとめたものです。
なぜ、主にNPOやイノベーションを学ぼうとするのに、このセレクトなのかという疑問もあるかもしれないので、今回はこの本の中身そのものよりも、そこに繋がる視点中心に書かせてもらうことにします。


なお、この論を展開するにあたって、お世話になっている「NPO法人シーズ・市民活動を支える制度をつくる会」の、松原明/池本桂子両氏の市民活動に対する深い造詣も、少なからず内容に影響を与えていることを、感謝と共に前置きさせて頂きます。

*参照「シーズの顔・特別インタビュー」
http://www.npoweb.jp/about_u/staff/2/ (松原)
http://www.npoweb.jp/about_u/staff/3/ (池本)

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「モノを売るのではなくストーリー性を売る」という言葉を、少し前からビジネスの世界では良く聞かれるのではないか。
一つの商品そのものの価値ではなく、その商品を手にすることでどのようなことが起きるか?つまり「モノより思い出」

テレビ電話機能つき携帯電話を売り出す30秒コマーシャルを作るなら、ビデオカメラの画素数や回線の速度等のスペックをだらだらと紹介するよりも、遠距離の恋人が笑顔で会話する様子を見せる方が圧倒的に効果があるだろう。
それこそがテレビつき携帯電話を手にする事で得られるであろう体験、その人に訴えかける物語なのだ。


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僕が思うに、NPOは特に1万円払ったら1万円分の商品が手に入るというようなものよりも、1万円の寄付で、例えば一人のホームレスがもう一度社会復帰に向けて立ち上がるとか、地域の子育て環境が良くなっていくとか、そういう「未来の物語」を提案する場面が多いと思う。
だからこそ、その物語がどれだけ魅力的か、社会がどれだけ素敵に変化するか という事を、相手の頭の中に明確に描いてもらわなければいけない。

そこに物語の「演出」という概念が必要になってくる。
もちろん「やらせ」や「嘘」ではいけない。ただ、楽しくおしゃべりしているだけに見えるテレビのバラエティ番組だって、事前の台本があり、打ち合わせがあり、リハーサルがあり、テレビの前の人を楽しませる入念な準備をしているのだ。

更に現実はテレビとは違って一方通行ではなく、見ている人たちのリアクションを含めて、ステージが成立する。
僕はそういう意味で演劇が好きだが、音楽が好きな人ならライブ、お笑いが好きな人なら寄席の魅力がそれぞれ通じると思う。


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全てのNPOが大きな変革の担い手である必要はなくて、例えば小さな町のお年寄りの居場所になる、ボランティアベースの小さなNPOもとても素敵だと僕は思う。
ただ、少なくとも社会にイノベーションを起こそうとするNPOは、会員や寄付者、ボランティア等の支援者を多く集め、巻き込み、変化を創造していく必要があるだろう。

当たり前のように、実際のところNPOの日々は90%以上地味だ。
経理作業でExcelに向かう、セミナーのPPTを作成する、会報発送の袋詰め作業、イベントの受付・・・etc

だがそこに自分たちの戦いのストーリー(——それは時に既存の制度に負けて這いつくばる姿や、キーマンとの出会いにより立ち上がって成果を手にする場面なども全て)を鮮やかに人々に見せ、魅せる、適切な演出をセットしていくことで、ストーリーはドラマチックになり、人々の興味・関心・参画を促進するだろう。

実際に、成功している若手社会起業家やNPOのリーダーの多くは、自伝の出版やtwitter等のソーシャルメディアで、自己や団体のストーリーをきちんと発信しているように感じる。


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改めて念押ししておくが、演出といっても僕は決して「やらせ」が必要と言っているのではなく「どのポイントを見てもらい、共感してもらうか」のアングルを、戦略的に考えていく必要性があると考えているだけだ。

昔ながらの活動家にありがちな「良いものはそのままで分かってもらえるはず」という、価値の置きっぱなしはやや傲慢であるように思える。とは言え、「これは絶対良いかものだからとにかく」と一方的に押し付けられるのも僕たちは好まない。

どのように人々の目を引き、選んでもらい、そして変化に主体的に関わってもらうか?
そういう視点でこの本を読む事は、全てのNPOにとって非常に良い視点をもたらすのではないかと思う。

 「オセロー」の一場面 (C)LEE Do-hee

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以下に、この本の中で特に僕の目が引かれたものを、いくつか自分の言葉で補足して紹介する。

「人物の奮闘や葛藤は、結果よりも大事である」
→プロセスこそが観客に登場人物の体験を共有、感情移入させる事が出来る。

「すべての点をつないではいけない」
→空白を生める余裕を観客に残し、イマジネーションを刺激する必要がある。

「作品のパワーは人物の要求の強さと等しい」
→要求と抵抗に人物の強さが表れる、競争のない芝居は観客にとって退屈だ。

「三人組を活かせ」
→二人では人間関係は1つしか存在しないが、三人では組み合わせで7つ。シチュエーションが多彩になる。

「裸の真実にご用心」
→人寄せの為にヌードなどの突飛な手法を使ってしまえば、観客の意識はそちらに惑わされてしまう。

「批評家たちに対処するには…」
→他人の評判に一喜一憂するな、失敗の反省にもならず、成功は必ずもう一度来るとは限らない

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