全ての組織において重要であり、また特に平等な力関係と民主的な意思決定を主とする非営利組織においては、特にマネジメントの難しさが表れるところであり、また本質ではないかと思います。
1976年に書かれ、2003年に日本語訳された古い本ですが、今読んでも非常に普遍的で重要な基礎が押さえられていますし、また、当時においてはかなり先進的/革命的だったのではないかと思われます。
(ちなみに著者の1人マイケル・ドイル氏はインテル、AMD、GE、IBM等様々な一流企業にファシリテーションの技術を導入してきた、著名な戦略コンサルタント&ストラテジストだそうです。)
__________________
1)なぜ会議は重要か
ほとんどの組織において「会議」は毎週毎月結構なペースで実施される。通常、人件費では7~15%がその負担にあてられるそうだ。
しかし、一方において「会議は踊る、されど進まず」と評されるように、一辺倒の儀式のように形式張っていて、その効果が実感されないという声も良く聞かれるのではないか。
会議は、1人では解決できない問題を複数の知恵を持ち寄ることで解決していく、また意思決定のプロセスに組織のメンバーを参加させ主体性を生むための手法だ。その成否の評価は「結果」と「プロセス」という2つの基準によって計られる。
まず、この本の最初に、会議を成功させるには、出席者全員が一つの問題、一つの進め方に同意していることが絶対条件としている。
●何を解決するか・・・コンテンツ(問題/話題/議題)
●どのように解決するか・・・プロセス(アプローチ/方法/進め方)
これらの前提を共有することにまずは力と時間を割くべきであり、ここが共有されない限り、議論は一方的なものかもしくはバラバラになってしまう。
会議における「コンセンサス(合意)」は、誰かを説得したり妥協させたりすることではなく、全員納得出来る状況を作り出すまで協力し合うという強い意志であるとこの本では定義されている。
多数決のような調停手法では必ず「Win-Lose」の関係になってしまい、それは共同作業ではない。意見の違いは自然なことであるという前提の上に立ち、ベストではなくても皆が納得できる解決策を出せることが「Win-Win」の状況と言えるだろう。
------------------
2)役割分担
本書の中で取り扱う会議運営手法は「ケース・メソッド」と呼ばれるものであり、いまでこそ少なくなった「リーダー=議事進行役」という枠組みを廃し、参加者の役割分担を明確にしている。
「マネージャー」「ファシリテーター」「メンバー」「書記」
以下に、それぞれの役割を確認していこう。
A.マネージャー
責任、権限を持ち、最終的な判断を下すリーダー。会議のプロセスをコントロールしようとしてはいけないがメンバーの1人といて議論には参加する。
最終的に結論が出ない場合の判断、また決定事項の実施と普及も行う。
B.ファシリテーター
完全に中立な立場に立ち、議事のスムーズな進行に尽くす役割。全員が発言しやすい前向きで建設的な雰囲気を作り、またそれを阻害するような個人攻撃や批判のみの発言、1人だけが長時間喋り続ける状況を避ける。
また「コンテンツ」と「プロセス」を区別し、整理して、どのような議事進行を行うかを参加者の同意を得ながら決めていく。
C.メンバー
会議の中心であると同時に、ファシリテーターや書記の監視役でもある。100%中立になれる人間はいないので、彼らの考え方や感情が会議に影響を及ぼすようであればそれを注意する。
D.書記
ホワイトボードもしくは模造紙に「会議メモ」を作成する。内容は箇条書きで構わない。可能な限り半円形の座席配置にすることで、参加者の意識とエネルギーをメモ(議題)に向けることが望ましい。具体的効用は以下。
・参加者がメモを取らず会議に集中できる
・議事が適切な順を追って進行し・また遡らずに済む
・遅刻者も現状を把握しやすい
・会議のプロセスを可視化する
・図や表を描くことができる
・個人のアイデアをグループのものとして取り扱うことができる。
(人間関係に左右されず価値・有効性の評価をできる)
------------------
3)タイプ別会議の進め方
一口に会議と言ってもその種類は様々である。それぞれの目的に応じた開き方、進め方をしなければならない。
ア.問題解決のための会議
現状を変えることが問題解決であるならば、まずはその現状を「問題」として認識するという点を共有しておかなければならない。また、メンバーの中に「どう取り組むか」を知っている人がいるということも重要な条件だ。
イ.意思決定のための会議
ピラミッド型の組織では最終的な決定権を持つ人間が限られている、また企業の取締役会のような水平的な組織であれば多数決にならざるをえない場面もある。
会議の前に必ず「どのように決定するか」「誰が決定するか」をメンバーに周知しておかなければ、強引に押し切られたと感じたり、また、形式だけであったと思われかねない。
ウ.計画を立てるための会議
短期的な実務的計画であれば、なるべく参加者が少ない方が早く決まりまた詳細を考慮することが出来る。逆に長期的な目標設定や戦略検討であれば、多くの人に参加してもらった方がその意識を高めることができるだろう。
エ.報告/発表のための会議
このタイプの会議が最も間違った方法で運営されやすい。単なる報告であれば他の手段で構わないし、もし報告を聞いた後に問題の所在を明らかにして解決に向かおうとするのであれば、質疑応答や問題解決型会議へのシフトは必須になるだろう。
オ.評価/フィードバックのための会議
結果を出すための会議とは大きく正確が異なる。通常以上に会議の運営を計画し、批判的にならないようにしなければならない。全員から発言を引き出し記録を残していくため、ファシリテーターと書記の役割が更に重要となる。
------------------
4)問題解決
問題を解決していくには、一定のステップを踏んでいく必要がある。個人レベルでは無意識にでも進んでいくプロセスを全体で行っていくため、ファシリテーターは力を割かなければならない。
ステップ①問題の認知
「問題=悪」ではないということをメンバーに徹底して認知させた上で、複数の角度からの問題の認識をすりあわせていく。問題を顕在化させ、それが放置された場合と解決した場合のシナリオをプランニングする。
ステップ②問題の定義
問題の分野を限定する、同時に狭くなりすぎた場合に見逃す危険性にも注意する。解決策と問題定義を明確に切り離す。
ステップ③問題の分析
問題をいくつかの構成要素に分解して考える。5W1Hや、維持力と改善抑止力の関係性を明確にする。下位問題への分化をする際には一般論と具体的な事例のバランスに注意する。
ステップ④選択肢の作成
ブレインストーミングや形態分析、既存の解決策のリスト化、付箋によるキーワードの切り離しと移動等の手段を用いて、クリエイティブなアプローチを増やしていく。
ステップ⑤選択肢の評価
どの選択肢が「良い」と判断するかは、自然のままでは個人的価値基準に依ってしまう。必ず判断の前に共通の判断基準を作り、合意しておかなければならない。
ステップ⑥意思決定
前提として、単一の案を選ぶ必要は無い。但し、全員一致のコンセンサスを得るまでは、要望を追加していく「足し算」と呑めない条項を削除していく「引き算」を駆使し微調整とし続けていく。
ステップ⑦計画
意思決定の後には実行の方策を議論することが多い、その手法には「フローチャート」「ゴールからの逆算」「5W1Hの明確化」「長期目標と短期目標の設定」などを駆使し組み合わせながら形にしていく。
ステップ⑧実践とフィードバック
まずはテストとしてとにかう実践し、その結果をモニタリングする。失敗を恐れずに適宜修正を加えて解決へ近づけていく。
*主には準備段階である①〜③に会議の時間の多くを割くべきとの注意書きもある。
__________________
今回はちょっと文章ばかり、それも中身をまとめただけのものになってしまいました。
ただ、それでも今後自分がチームをマネジメントしていく時、また、もっと大きなフレームで僕たちが「対話し、合意形成し、自分たちで社会を創っていく」ことに対しても、基礎力を高めていくことができた気はしています。
こちらも師匠の1人から貰い受けましたが、ビジネス名著としてオススメ。
もっと深く学びたい、読んでみたいという方はぜひお買い求めください。
日経ブック&ビデオクラブ http://p.tl/r8wr
このチャレンジに共感した!役にたった!応援する!と言う方はぜひ
JustGivingからご寄付をお願いします* → http://p.tl/L-o9
0 件のコメント:
コメントを投稿