2011年9月10日土曜日

JG6日目『演出についての覚え書き』

JustGivingチャレンジ6日目、出張で空いてしまった分は、10月に押し出して先送りするか、1日2冊ペースで取り戻せるか悩んでいます。23〜25日にも東京で泊まり込みの研修があるので。

さてさて、ともあれ今回の本のご紹介ですが、演劇の世界でも特に脚本家や俳優ではなく「演出家」に求められるエッセンスを一言×130の項目にまとめたものです。
なぜ、主にNPOやイノベーションを学ぼうとするのに、このセレクトなのかという疑問もあるかもしれないので、今回はこの本の中身そのものよりも、そこに繋がる視点中心に書かせてもらうことにします。


なお、この論を展開するにあたって、お世話になっている「NPO法人シーズ・市民活動を支える制度をつくる会」の、松原明/池本桂子両氏の市民活動に対する深い造詣も、少なからず内容に影響を与えていることを、感謝と共に前置きさせて頂きます。

*参照「シーズの顔・特別インタビュー」
http://www.npoweb.jp/about_u/staff/2/ (松原)
http://www.npoweb.jp/about_u/staff/3/ (池本)

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「モノを売るのではなくストーリー性を売る」という言葉を、少し前からビジネスの世界では良く聞かれるのではないか。
一つの商品そのものの価値ではなく、その商品を手にすることでどのようなことが起きるか?つまり「モノより思い出」

テレビ電話機能つき携帯電話を売り出す30秒コマーシャルを作るなら、ビデオカメラの画素数や回線の速度等のスペックをだらだらと紹介するよりも、遠距離の恋人が笑顔で会話する様子を見せる方が圧倒的に効果があるだろう。
それこそがテレビつき携帯電話を手にする事で得られるであろう体験、その人に訴えかける物語なのだ。


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僕が思うに、NPOは特に1万円払ったら1万円分の商品が手に入るというようなものよりも、1万円の寄付で、例えば一人のホームレスがもう一度社会復帰に向けて立ち上がるとか、地域の子育て環境が良くなっていくとか、そういう「未来の物語」を提案する場面が多いと思う。
だからこそ、その物語がどれだけ魅力的か、社会がどれだけ素敵に変化するか という事を、相手の頭の中に明確に描いてもらわなければいけない。

そこに物語の「演出」という概念が必要になってくる。
もちろん「やらせ」や「嘘」ではいけない。ただ、楽しくおしゃべりしているだけに見えるテレビのバラエティ番組だって、事前の台本があり、打ち合わせがあり、リハーサルがあり、テレビの前の人を楽しませる入念な準備をしているのだ。

更に現実はテレビとは違って一方通行ではなく、見ている人たちのリアクションを含めて、ステージが成立する。
僕はそういう意味で演劇が好きだが、音楽が好きな人ならライブ、お笑いが好きな人なら寄席の魅力がそれぞれ通じると思う。


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全てのNPOが大きな変革の担い手である必要はなくて、例えば小さな町のお年寄りの居場所になる、ボランティアベースの小さなNPOもとても素敵だと僕は思う。
ただ、少なくとも社会にイノベーションを起こそうとするNPOは、会員や寄付者、ボランティア等の支援者を多く集め、巻き込み、変化を創造していく必要があるだろう。

当たり前のように、実際のところNPOの日々は90%以上地味だ。
経理作業でExcelに向かう、セミナーのPPTを作成する、会報発送の袋詰め作業、イベントの受付・・・etc

だがそこに自分たちの戦いのストーリー(——それは時に既存の制度に負けて這いつくばる姿や、キーマンとの出会いにより立ち上がって成果を手にする場面なども全て)を鮮やかに人々に見せ、魅せる、適切な演出をセットしていくことで、ストーリーはドラマチックになり、人々の興味・関心・参画を促進するだろう。

実際に、成功している若手社会起業家やNPOのリーダーの多くは、自伝の出版やtwitter等のソーシャルメディアで、自己や団体のストーリーをきちんと発信しているように感じる。


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改めて念押ししておくが、演出といっても僕は決して「やらせ」が必要と言っているのではなく「どのポイントを見てもらい、共感してもらうか」のアングルを、戦略的に考えていく必要性があると考えているだけだ。

昔ながらの活動家にありがちな「良いものはそのままで分かってもらえるはず」という、価値の置きっぱなしはやや傲慢であるように思える。とは言え、「これは絶対良いかものだからとにかく」と一方的に押し付けられるのも僕たちは好まない。

どのように人々の目を引き、選んでもらい、そして変化に主体的に関わってもらうか?
そういう視点でこの本を読む事は、全てのNPOにとって非常に良い視点をもたらすのではないかと思う。

 「オセロー」の一場面 (C)LEE Do-hee

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以下に、この本の中で特に僕の目が引かれたものを、いくつか自分の言葉で補足して紹介する。

「人物の奮闘や葛藤は、結果よりも大事である」
→プロセスこそが観客に登場人物の体験を共有、感情移入させる事が出来る。

「すべての点をつないではいけない」
→空白を生める余裕を観客に残し、イマジネーションを刺激する必要がある。

「作品のパワーは人物の要求の強さと等しい」
→要求と抵抗に人物の強さが表れる、競争のない芝居は観客にとって退屈だ。

「三人組を活かせ」
→二人では人間関係は1つしか存在しないが、三人では組み合わせで7つ。シチュエーションが多彩になる。

「裸の真実にご用心」
→人寄せの為にヌードなどの突飛な手法を使ってしまえば、観客の意識はそちらに惑わされてしまう。

「批評家たちに対処するには…」
→他人の評判に一喜一憂するな、失敗の反省にもならず、成功は必ずもう一度来るとは限らない

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